号外:世界の石油需要、2019年でピークアウトか?

代表的な化石資源である石油。長らく資源枯渇の可能性が心配されてきました。最近では、気候変動対策を背景とした脱化石燃料、そして再生可能エネルギーへの転換が求められています。また新型コロナウイルス感染症からの経済復興局面においては、グリーンリカバリーとしてその方向性に注目が集まっています。このような中で、英石油大手のBP(British Petroleum)がエネルギー見通しを公表しました。

2020年9月15日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

英石油大手BPは9月14日公表のエネルギー見通しで、世界の石油需要が既にピークを過ぎた可能性もあるとの見方を示した。新型コロナウイルスの影響による世界経済の悪化や行動様式の変化で、感染拡大前の水準に戻らないシナリオを盛り込んだ。どの想定の下でも化石燃料から再生可能エネルギーへの消費の移行は進む。

“今回の報告書では2050年までの長期予測を出した。環境政策や技術開発が最近の傾向に沿って進む前提の「標準ケース」に加え、政策主導でエネルギー転換が勢いづく「急速」、低炭素化がさらに活発な「ネットゼロ」の3つのシナリオを想定した。”

BPの石油需要見通し

標準以外の2つのシナリオでは、世界の石油需要は新型コロナウイルス感染症による落ち込みから完全には戻らず「2019年に天井を打ったことを意味する」とした。低炭素化が最も急激に進む場合は2018年の日量9980万バレルから、2030年に9250万バレル、2050年には3060万バレルまで縮む。標準シナリオでは2030年代に減少に転じ、2050年に9310万バレルになる。いずれの場合も石油需要は先進国や中国を中心に減ってゆく見通しだ。”

気候変動対策を背景に石油需要の今後の減少は想定されていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で拍車がかかる。報告書は2025年時点で日量300万バレルの押し下げ要因になると推計した。旅行の減少や在宅勤務の広がりなど、いくつかの要素はウイルスが収まっても残るとしている。”

化石燃料が今後シェアを落とす一方、風力や太陽光などコスト低下が進む再生可能エネルギーが存在感を高める。1次エネルギーに占める比率は2018年の5%から、2050年には標準シナリオで22%、「急速」シナリオでは44%に高まると予測した。

気候変動対策を背景に、新型コロナウイルス感染症により停滞した世界経済を復興させる局面で、欧州を中心に世界の趨勢は化石燃料から再生可能エネルギーへの転換に大きくカジを切ったように思われます(グリーンリカバリー)。パリ協定に背を向けた米トランプ政権ですが、政府の思惑とは別に、アメリカでも風力発電や太陽光発電は着実に増えてきています。心配なのは日本です。日本の再生可能エネルギーへの転換は非常に遅れていると感じます。世界では再生可能エネルギーの普及とともに、その低コスト化が着実に進んでいます。このままでは、日本は脱炭素の遅れを世界各国から非難されるだけでなく、高エネルギーコスト体質に陥り、国際競争力を失ってゆくことにもつながります。日本でも新しい総理大臣が選出されました。新しい政府では、これまでのしがらみを断ち切って、再生可能エネルギーへの転換を進めてもらいたいと思います。もうこれ以上の猶予はありません。

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