消費者の「修理する権利」②

例えば、自動車のタイヤや携帯電話は計画的陳腐化の完璧な例だ。米環境保護庁によると、2003年の時点で、使用済みタイヤの約80%が何らかの方法でリサイクルされている。これだけ多くのタイヤが再利用されているのは素晴らしいニュースだが、約6000万本のタイヤがいまだに埋め立て地に捨てられているか、あるいは単に原野に捨てられているということでもある。小型でありながら資源依存度の高い携帯電話もその代表的な例だ。携帯電話の「内臓」について考えてみたい。このような小さな驚異的なテクノロジーには、コバルト、銅、金、その他の紛争鉱物などの貴金属が必要で、これらはメーカーが継続的に調達しなければならない。また、プラスティック、シリコン、樹脂なども必要で、これらはすべて工場で製造する必要がある。計画的陳腐化が私たちの環境に与えるダメージは深刻だ。そのため、多くの消費者は、アップルのような知名度の高い企業がこのようなマーケティング戦術を使用していると聞くと、ショックを受けるだろう。”

“フォーブス(アメリカで発行されている経済雑誌)によると、アップルは数年前、新製品の販売を促すために旧型iPhoneの速度を落としていることを公然と認めた。その後、2018年にはフランスでアップルとサムスンが、同じ理由で調査を受けた。このことは、意識の高い消費者に以下の点で警鐘を鳴らすだろう。

*意図的に技術を使い物にならないようにして売上高を上げることは、非常に非倫理的だ

*バッテリーのような基本的な部品を交換不可能にし、消費者が自分の商品を修理できないようにすることは、新製品の売上高を増やすことを意味する

*収益のために、消費者が追加の資金を使い、不必要な負荷を環境にかけている

修理する権利、公正な修理という概念は、米国の自動車産業から生まれた。マサチューセッツ州は、2012年に自動車所有者の修理する権利法を最初に可決した州だ。この画期的な州法は、自動車メーカーに対し、誰でも自分の車を修理できるよう情報提供することを要求した。連邦法ではないものの、2018年現在、米国で販売するすべての自動車メーカーは、50州すべてでマサチューセッツ州の法律を順守することに合意している。”

“マサチューセッツ州の取り組みに触発されて、2013年に「デジタル修理権連合」が設立され、コンピュータや携帯電話などの家電製品に同じ原則を適用している。デジタル修理権連合は、2013年に501(c)6貿易協会として法人化された。ウェブサイトによると、目指すのは修理に適した法律、基準、規制のためにロビー活動を行うことで、慈善団体ではなく業界団体であることを選んだ。そのため「Repair.org」は100%会員からの出資により成り立っている。現在、同連合はスマートフォンやコンピュータ、ノートパソコン、タブレットなどの家電製品を対象に活動している。しかし、今後は、スマートフォンだけでなくペースメーカーや補聴器などの日かのパーソナル・デバイスの修理の可能性や再利用の可能性に取り組んでいこうとしている。”

“最終的に重要になるのは、消費者が電子機器メーカーに対してより多くのことを要求するかどうかだ。それが保証の長期化を意味するのか、簡単に機器を修理できるようにするのかに関わらず、メーカーは今よりも良い方法を見つけ実行することができるはずだ。スマートフォンや電子機器をリサイクルすることは、製造過程で生じる汚染や地球環境への負荷を減らすための一つの方法だろう。

いかがでしょうか。この記事は米国での事例や、現在のメーカーや消費者の取り組みを中心に構成されています。記事の論調はちょっと厳しいですが、大切なポイントを突いているように思います。それぞれの製品の規格やグレード、消費者の使用条件によっても製品寿命は影響されますが、メーカーが意図的に陳腐化するように仕組んでいるとしたら問題です。修理するのか、新しい製品を購入するのかは個々の消費者の判断です。最新の機能や利便性を求める消費者もいれば、多少不便なところがあっても、手元の製品を大事に使い続けたいと思う消費者もいます。冒頭にも述べたように、「気に入った製品を大切に長く使うこと」は環境配慮を考えるときに、とても大切なことです。あまりに古い製品で、修理するための部品が入手できなくなるということはあるかもしれません。しかし一定の期間(様々な製品での期間設定は簡単ではないでしょうが)は、必要であれば修理して使い続けることができる環境が必要だと思います。

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