号外:海洋プラごみ、解決のカギは漁具、クラレの新素材

2020年10月12日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“漁業に使う網やブイといった道具を環境に配慮した素材に替えたり、リサイクルしたりする動きが広がっている。クラレは生分解性の漁具の開発に着手し、海外での販売もにらむ。海洋プラスティックごみはペットボトルや食品容器などが代表例だが、日本に漂着する全体の4割を占め最も多いのは漁具だ。

カキの養殖に使用する漁具

“広島県廿日市市。日本有数のカキの名産地である地御前港の養殖場の一角で、海洋プラごみ削減に向けた実証実験が進む。クラレと水産商社のニチモウが組み、生分解性プラスティック製漁具を開発している。クラレとニチモウは2018年10月から、カキを付けて水中につるす養殖用のパイプに生分解性プラを使う実験に取り組んできた。万が一パイプが劣化で折れたり欠けたりした場合にも、海底に沈み土の中で水とCO2に分解され、ごみが出ないのが特徴だ。

通常のプラスティック製のパイプと比べて耐久性が劣るという課題がある。現在は素材や加工方法の異なる4種類で実験し、2020年度末まで実験を続ける。長く使い続けた場合の強度の変化などを検証し、実用化に向けた改良を続ける。将来は環境意識の高い欧米などでの展開も視野に入れる。”

漁具は海洋プラごみの深刻な問題を引き起こしている。環境省が2017年度に北海道根室市や兵庫県の淡路島など全国10か所の海岸に漂着したごみを調査した結果では、全体の約40%が漁具だった。2番目のペットボトル(約8%)を大きく引き離している。ペットボトルなどの海洋プラごみは中国やインドネシアなどアジアからたどり着いたものが多く、環境省の調査でも外国語のラベルのペットボトルが目立った。一方、漁具は発生源の特定が難しい面があるが、業界では日本に由来しているとの見方が多く、対策は急務だ。

日本に漂着する海洋プラごみの内訳

クラレ生分解性プラスティック事業の売上高を2026年に1億ドル(約108億円)と、2019年比5倍に引き上げる計画を掲げている。2020年からは米国で生分解性の食品容器などの販売を始めている。国内外で環境負荷の少ない漁具も投入し、製品の幅を広げてゆく。”

“他社も商機とみて動く。プラスティックの再資源化を手掛けるリファインバースは、古くなった漁網をナイロン繊維にリサイクルする技術を開発した。漁業者から買い取った廃漁網を洗浄して細かく裁断し、異物を取り除いて再生繊維を作る。衣料品メーカーなどへの供給に向け、2020年度中にも量産体制を整える。同社は漁網からリサイクルした樹脂も手掛ける。2020年3月からはアパレル資材などを取り扱う商社のモリトジャパンと組み、漁網由来のボタンなど服飾付属品の販売を始めた。

“日本沿岸に漂着する海洋プラごみの内訳として漁具が多い背景の一つに、廃棄する場合の漁業者の費用負担がある。漁網やブイといった漁具を捨てる場合には、漁業者が産業廃棄物処理業者に処理を委託することが原則とされる。ただ漁獲量の減少などから苦境にある漁業者にとって処理費用は大きな負担で、適正な処理をせず不法投棄してしまう例が多いという。廃棄ではなくリサイクルする場合には「資源」として有価で買い取ってもらうことができる。別の製品としてリサイクルできるということは漁業者の間でまだあまり知られていない。認知度の向上も海洋プラごみの低減への課題となる。”

日本に漂着する海洋プラごみの約40%が、日本の漁業者が不法投棄した日本由来の漁具が占めているということは全く知りませんでした。アジア各国から漂着するペットボトルや食品包装材が中心だと思っていたのですが、大きな勘違いでした。しかし一方で、数量が多いのが日本由来の廃棄された漁具であるならば、この記事にもあるように、国内で再利用して削減することが可能です。速やかに実施して欲しいと思います。世界的に見ても、海洋プラごみの中で廃棄された漁具が多いのであれば、日本でノウハウを蓄積して、世界の海洋プラごみ削減に貢献することもできると思います。

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