オンワード「売らない店」拡大

アパレル企業は長年にわたって、大量生産→過剰在庫→大量の売れ残り→セール等処分による収益圧迫→セール待ちの消費者が増え、正価販売の更なる減少といった構造的な悪循環を抱え、その対策を先送りにしてきました。今年の感染症拡大による営業自粛などの影響で、店頭での販売が更に落ち込み、これまで内在していた問題が一気に表面化しています。このままでは事業の存続自体が危ぶまれる危機に直面し、各社は打開策を検討していますが、そう簡単にトンネルを脱することができない状況です。

2020年10月20日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“業績悪化に苦しむアパレル各社が事業モデルの転換に挑んでいる。オンワードホールディングスは2020年中に試着のみの実店舗を新設する。購入はネット通販で、商品は配送する。店に在庫を持たずにすむため、アパレルの課題とされる過剰在庫の圧縮につながるとみている。”

“オンワードHDは今年度中に、ショッピングセンター(SC)などで新型店を数店出す。場所は首都圏や関西を想定している。店名は自社の通販サイトと同じ「オンワード・クローゼット」とし、「23区」など複数の主力ブランドを扱う。店舗数は来年度にかけて数十店に増やす。こうした仕組みを実店舗で明確に打ち出すのは大手アパレルメーカーで初だ。”

店舗では基本試着以外の在庫は持たず、来店客は気に入れば店頭や自宅でネット通販から注文してもらう。在庫は物流拠点に集約するため、品切れを懸念して店に余分な在庫を置く必要が無くなる。配送コスト削減や商品管理の効率化にもつながる。通常のアパレル店は1ブランドしか扱わないが、今回の新店は1店舗で複数のブランドから商品を選べる利点がある。”

“アパレル各社はシーズンごとに大量の商品を投入し、売れ残りをセールなどで処分してきたが、衣料品の市場は年々縮小。2019年は約28億点の衣類が供給されたが約半数が売れ残るなど、収益悪化の主因となっている。こうした状況下で新型コロナウイルス感染症が直撃した。オンワードHDはデジタル化にかじを切り、店舗数は今年度末に1400店規模と2年前から半減させる一方、売上高に占めるEC比率を早期に4~5割に引き上げる方針だ。

消費者に直接商品を販売し、製品在庫を抱えないD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)は他の小売りも模索している。丸井グループはオーダースーツを手掛けるファブリックトウキョウ(東京・渋谷)などD2C企業と提携。店頭で採寸しネットで購入してもらう「体験型」の店舗を増やしている。”

“ただ、アパレル各社の置かれた環境は厳しい。オンワードHDの2020年3~8月期の最終損益は151億円の赤字(前年同期は244億円の赤字)に陥った。現預金は売上高の2ヶ月分あるが、有利子負債と自己資本の割合を示す負債資本倍率(DEレシオ)は1.3倍と半年間で0.6倍分増えるなど、有利子負債の負担も増している。

オンワードHDが挑む「オンワード・クローゼット」の試みですが、うまく立ち上がればオンワードHD側には色々とメリットがありそうです。しかし、消費者にとっては何がメリットなのかがはっきり見えてきません。消費者は店舗で試着して、それをネット通販で購入するという2度手間になりそうな気がします。このような新しい試みを定着させるためには、消費者のメリットを明確に訴求するマーケティングが必要だと思います。

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