号外:2050年脱炭素実現へ政府の「グリーン成長戦略」

2050年の脱炭素社会実現に向けて、政府の「グリーン成長戦略」がまとまりました。エネルギー、輸送・製造、家庭・オフィスのカテゴリーで、14の分野での施策を実施し、総合的に目標の達成を目指します。目標達成のために課題は山積しています。しかし、その課題を克服していくための技術革新によって、新たな経済成長力、国際競争力の獲得にもつながります。これから30年間の着実な実行によって、持続可能社会の構築に結実することを期待しています。もちろん私たち一人ひとりも当事者意識を持って、自分たちにできるところから取り組んでいくことが求められています。

2020年12月24日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“2050年の脱炭素社会の実現に向けた政府計画の原案がわかった。洋上風力や水素など14の重点分野を設定し、電気自動車(EV)はコスト全体でガソリン車並みをめざす。原子力発電は小型新型炉の開発を進める。政府が明確に中長期の目標や支援策を示し、民間企業が投資を進めやすい環境を整えて高い目標の達成につなげる。

14のグリーン成長戦略

“12月25日にも「グリーン成長戦略」として発表する。政府が掲げる2050年の温暖化ガス排出量実質ゼロに向けた工程表と位置付け、各分野の具体的な計画を盛り込んだ。”

自動車では2030年代半ばまでに軽自動車も含めた新車販売をEVやハイブリッド車(HV)といった電動車にする。電動車の普及の課題はコストをどう抑えるかだ。EVは一般的にガソリン車より100万円ほど価格が高い。計画ではコスト増の主な要因である蓄電池の価格を2030年までに1キロワット時あたり1万円以下に下げることを目標にする。現在は1万円台半ばから2万円程度とされる。充電にかかるコストなども下げEV利用者の負担をガソリン車並みに抑える。大型のバスやトラックなど商用車はさらに電動化のコストがかさむ。今回は目標設定を見送り、来年夏ごろをめどに改めて目標を示す。”

エネルギーでは特に洋上風力に重点を置く。国内は欧州に比べて普及が遅れており、潜在的な拡大余地が大きい。2040年までに最大4500万キロワットと原発45基分にあたる量をめざす。国の技術審査の期間短縮や効率的な送電方法の導入など、新エネルギー事業者が参入しやすい環境を整備する。”

2050年の脱炭素電源

再生可能エネルギーは計画で「最大限の導入を図る」と明記した。電動化の拡大などで2050年には電力需要が現状より3~5割増えると見込む。今後の議論の参考値として、電源に占める再生可能エネルギーの割合は2050年に5~6割と現状の3倍前後、CO2の回収をセットにした火力と原子力は計3~4割、水素とアンモニアで計1割とした。水素とアンモニアは火力発電の燃料として活用する。水素の消費量は2050年までに年2000万トン程度と、単純計算で国内全体の設備容量の2割程度にする。アンモニアは2030年までに火力発電の20%で使う方針だ。

原子力は東日本大震災後の再稼働が少数にとどまる。計画では現在の原子炉と比べ安全性が高いとされる小型原発の開発で国際連携を進めるとし、2050年に向けて利用を継続する方針を示した。”

“住宅や建築物は新築平均で2030年までに排出量ゼロをめざす。EVなどで電力を効率よく動力に変換するパワー半導体の消費電力は2030年に向けて現在の半分に減らす。”

“温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標は欧州や中国なども打ち出しており、日本も菅義偉首相が2050年までに達成する目標を打ち出した。実現には官民で年10兆円超の投資が必要との試算もある。民間の活発な投資を引き出してコストを下げ、新技術の普及を通して企業の収益拡大や経済成長につなげられるかが焦点になる。

CO2を排出する化石燃料を熱源・動力源に使用することから、再生可能エネルギーを中心とした電源へ切り替えてゆくのですから、「電動化の拡大などで2050年には電力需要が現状より3~5割増える」ことになります。この電力需要をどのようにして賄うのかが大きな課題です。当然ですが、受容可能なコストを実現するためには、柔軟に対応できる送電網や蓄電池などの付随する技術革新も必要になります。また、ある程度のCO2の排出は避けられないでしょうから、そのCO2を回収・再利用(カーボンリサイクル)する技術開発も必要です。色々考えると、やはりこれは相当に大変なことです。一般人(消費者)としては、やはり先ずは自分の周りの省資源、省エネルギーから始めたいと思います。小さくても、見直すべきことは色々とありそうです。

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