通勤スタイル革命、これがスーツか?

消費者の環境志向の高まりやコロナ禍による在宅勤務の定着などの要因で、通勤スタイルに変化が生まれ「脱スーツ、脱ネクタイ」という流れが広がっています。通勤や仕事のためのスーツを中心に事業を展開してきたアパレルでは、事業規模の縮小や業態の変更を余儀なくされています。その一方で、新しい通勤着、新しい仕事着を企画し、消費者の評価を得ている企業もあります。

2020年1月29日付け日本経済新聞に掲載された記事より、

“時代の節目に伴い、消費スタイルの定型は崩れていく。環境志向の高まりを受けたクールビズでネクタイルックが廃れ、3月11日で発生10年になる東日本大震災では女性のヒールが低くなり、スニーカースタイルが急増した。新型コロナウイルスの感染拡大で、割を食ったのは言うまでもなくスーツだ。象徴的なニュースが青山商事が専門店の約2割にあたる約160店を閉鎖するという動きだが、一方で新たな通勤着スタイルが定着しつつある。”

“2020年に話題になったのがニューバランス(NB)のスーツだ。面白いのは「シューズを美しく見せるため」という着眼点にある。まず先行販売したパンツは、シューズと裾との間を約2.5センチ空けたのが特徴。主役はあくまで足元というわけだ。「ジャケットも欲しい」という消費者の要望に応えて上着も発売し、まさに在宅でも通勤でも使える共用系ファッションになった。同年9月にはセットアップできる5種類のジャケットとパンツに商品を広げた。実はNBスーツは日本初で、中国でも販売を始め、今後グローバルに展開してゆく予定という。”

“こうした非衣料系企業のスーツでは、オアシススタイルウェア(東京・港)が立ち上げた「ワークウェアスーツ(WWS)」も有名だ。オアシスの母体は水道会社。若い社員の確保を狙い、おしゃれで動きやすい作業着を考えたのがきっかけだ。社内ユニフォームとして利用を始めると、三菱地所からマンションの管理者用として注文が舞い込む。こうした経緯からアパレル事業に参入した。”

デートに着ていける作業着を作ろう!>の項を参照

“試行錯誤を繰り返していると、想定外の潜在ニーズを発見した。外回りをしたり社外の人物と会ったりするワーカーの需要だ。タクシー、コピー機のメインテナンス、マンション管理者、IT技術者などで、堅苦しいスーツは合わないのに、それが当たり前だと思い込んでいた人々だ。デジタル化を中心とした産業構造の変化で「制服組」か「非制服組」かという区分は時代遅れになった。しかもスーツの代替品はユニクロぐらいでニューノーマルなワークウェア需要は大きかった。

“WWSはネット販売中心で、実店舗は期間限定のポップアップストアだけだったが、2020年9月に常設店舗をオープン。ネットの売上高は前年の10倍に伸びているが、実店舗も想定の2倍の売れ行きという。上下で3万円で、ユニクロなどに比べると割高だ。素材も独自開発で、耐久性、機能性、着心地を追求し、量販店には価格で勝てないのでスーツのアップルウォッチ的存在を目指す方針だ。市場が縮むのは既存のプレーヤーが創造性を欠くから。閉塞市場をこじ開けるのはいつでも「よそ者」だ。

夏場のクールビズでノーネクタイ、ノージャケットになり、冬場のウォームビズでも最近はノーネクタイが増えてきました。ネクタイをする機会がめっきり減ったので、上下そろいのスーツよりは、ジャケットとパンツの組み合わせの方が着回しもできて便利です。昔は朝ネクタイを締めることで、気持ちをオフからオンへ切り替えるようなところもありました。スタイルは変化していきますが、服を着なくなったわけではありませんから、その時その時で消費者に支持されるスタイル、ブランドがあります。全体としてはフォーマルからカジュアルなスタイルへ変化し、同時に快適な(楽な?)着心地や機能(軽さ、ストレッチ、紡シワ性、撥水性など)へのこだわりも見られます。TPOに合わせた服装は必要ですが、以前ほど華美な差異化は求めず、合理的なファッションが多くなってきたように思います。そのせいで同質化(同じようなスタイル、同じような価格帯)が進んでいるような気もします。どこかでその反動がでてくるのでしょうか。

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