号外:カーテンで発電する日、「緑のエネルギー」新秩序の礎

日本が、世界が、2050年近辺に「カーボンニュートラル」を目指す方向が鮮明になってきました。この目標を達成するためには様々な技術革新が必要になります。特に、自動車の電動化を実現するためには、総発電量を増やさなければなりません。しかも、増加分は再生可能エネルギー等の脱炭素電源によるものでなければなりません。日本でも新しい脱炭素電源獲得のための技術開発が進んでいます。

2021年1月4日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“カーボンゼロが告げるのは新たな電化社会の到来だ。車が電気で動くようになり、世界の電力需要は2050年にいまの2倍になる。しかもCO2を排出しない電気が必要だ。「緑の電力」を増やす闘いが始まっている。”

“「あらゆる場所を太陽電池で埋め尽くせる」。東芝はフィルム型の太陽電池の開発に挑んでいる。電気を生む効率は世界最高の14.1%。ビルの壁面や電気自動車、自動販売機、スマートフォン、衣服、カーテンなど、どこにでも設置できる。新型の太陽電池は「ペロブスカイト型」と呼ぶ。液体の原料を塗るだけで薄く透明に作れる。重くて硬い現在の太陽電池に代わり、街中を再生可能エネルギーの「発電所」に変える。ここ10年余りで発電効率を急速に高め、今の太陽電池の20%台に迫る。米スタンフォード大学のチームは製造法の革新で、1キロワット時あたり2円前後と最も安い再生可能エネルギーの1つになるとみる。”

ペロブスカイト型太陽電池を2009年に発明したのは桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授だ。ノーベル賞候補にも挙がる。「中国はこの電池の研究者が1万人はいる。日本の10倍超だ」。日本が太陽電池の性能で先んじながら、市場の獲得で海外勢に敗れた苦い過去が頭をよぎる。発電の適地が限られる都市部などでペロブスカイト型は不可欠。日本発の技術で再び負けるわけにはいかない。”

“エンジンを止めた漁船は数分で何十メートルも流された。「潮が速すぎるけん、漁をする人も少ないとよ」。長崎県五島列島の海峡「奈留瀬戸」。地元の漁師がそう話すほど速い潮の流れを生かし、国内初の「潮流発電」の準備が進む。海底でプロペラを回し、発電機を動かすため、天気に左右されず発電量を計算できる。九電みらいエナジーが環境省から実証事業を受託している。太陽光並みの発電コストとはいかないが日本近海には原子力発電所20基分の潮流エネルギーが眠るとみられる。

海流発電、黒潮の力を手中に:海洋国家日本の再生可能エネルギー>の項を参照

再生可能エネルギーを手にした国は、「成長か我慢か」という二者択一の議論に終止符を打てる。エネルギーのコストがかさめば、国の競争力低下を招く。再生可能エネルギー比率を約5ポイント増やすのに、ドイツは年3000億円の国民負担で済ませたが、日本は年1.8兆円に膨らんだ。カーボンゼロの電化社会は内燃機関にも電化を迫る。英国は2030年からガソリンで動く新車の販売を禁じる。英石油・ガス大手のBPによると2050年に1次エネルギー消費に占める化石燃料の比率は2018年の85%から20%に減るとみられる。”

世界の石油需要、2019年でピークアウトか?>の項を参照

“原油は石油輸出国機構(OPEC)加盟の産油国全体に年6000億ドル(約62兆円)もの富をもたらしている。一大供給地の中東に日本は輸入原油の約9割を頼る。中東の紛争などに世界は翻弄されてきた。「石油の世紀」の終焉は世界の政治や経済が築いた秩序を塗り替える。エネルギーの新たな主役となるのは誰か。決め手となるのはイノベーションを生む「知」という新たな資源だ。

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