使用後衣料品の回収:リサイクルする前に

一般廃棄物と産業廃棄物

これまでに「リサイクル(廃棄後の再資源化)の前提は素材の分別です。分別しなければ再資源として利用できません。」ということを書きました。実は素材の分別の前にもうひとつ重要なプロセスがあります。それが使用後衣料品の「回収」です。回収しなければ素材分別もできません。

廃棄物(ゴミ)は大きく2つに区分されます。「一般廃棄物」「産業廃棄物」です。一般廃棄物は家庭から排出されるゴミです。産業廃棄物は事業活動によって生じた廃棄物で、企業が排出するものです。皆さんの家庭ではどのようにしてごみを処理しているでしょうか。日本では一般廃棄物は行政(市町村あるいは広域連合)が回収して処理しています。地区毎に行政の指導で区分したゴミ(燃えるゴミ、燃えないゴミ、ペットボトル、その他プラスティック等)の回収日が決まっていますよね。皆さんはそのスケジュールに合わせて指定のゴミ・ステーションにゴミを出していると思います。皆さんが出したゴミは行政が委託した業者によって回収され、区分され、リサイクルできるものはリサイクルされ、リサイクルできないものは焼却施設で焼却されます。一般廃棄物は行政が処理するのがルールで、それ以外の人が勝手に取り扱ってはいけないことになっています。ただこれには例外があります。昔から「専ら物(もっぱらぶつ)」と呼ばれている古紙(新聞紙や段ボール)、金属(缶)、ビン、古着の4品目です。この4品目は再資源化を促進するために一般廃棄物取扱いの特例として、収集・運搬・処理について許可不要となっています。廃品回収業者や地域子供会の廃品回収などがこの実施例に当たります。

産業廃棄物には粗大なものや取扱いに注意が必要なものが含まれますので、その取扱いは非常に厳しく管理されています。産業廃棄物は指定業者が指定車両で運ぶ必要があり(地方公共団体毎の届け出が必要)、排出者(企業)から処理業者までの廃棄物の動きを「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」という書類で管理・報告することが義務付けられています。したがって産業廃棄物の排出には費用負担が発生します。時々、「産業廃棄物が裏山に放置されていた。」というようなニュースがありますが、そのようなルール違反は周辺環境に悪影響を与えますので、摘発されれば厳しく罰せられることになります。ただこれにも例外があります。「広域認定制度」といいます。この制度は環境大臣から認定を受けた製造業者が、複数の都道府県にまたがって安全性が確認された使用済み製品の回収・リサイクルを実施する際に、地方公共団体毎の廃棄物処理業の許可を不要とする特例制度です。マニフェストも不要になります。製造業者が責任を持って広域的なリサイクルを促進するための制度です。

廃棄物の区分

使用後の衣料品も2つに区分されます。一般家庭から排出されるものは一般廃棄物で、企業から排出されるもの(企業が保有・管理しているユニフォーム等)は産業廃棄物です。皆さんは使用後衣料品をどのように処理していますか。古着ショップやインターネットで販売できるものは限られています。私が住んでいる地区でも子供会の廃品回収がありますが、古紙や缶は多く見かけますが古着が出されているのはあまり見かけません。自分が身に付けた衣料品というのは新聞紙やアルミ缶とは異なり、廃品回収に出すのは「恥ずかしい」という意識が働くのかもしれません。ということは、多くの(ほとんどの?)使用後衣料品は燃えるゴミとして排出されていることになります。古着ショップやインターネット販売はリユースの一環です。廃品回収に出してもらえれば、そこから業者を介してリユースやリサイクルのルートに乗せることができます。しかしいったん「燃えるゴミ」として排出されたものは、焼却施設で焼却されるだけで回収のしようがありません。初回で引用した資料によると、国内で排出される使用後衣料品の74%はリユースもリサイクルもされずに直接焼却処理されています。衣料品のリサイクルが進まない理由のひとつは、一般家庭からの回収が進まないことです。回収できなければリサイクルできませんよね。

企業から産業廃棄物として排出される使用後衣料品(ユニフォーム等)については、ユニフォーム製造企業が(あるいはユニフォーム製造企業が連携して)広域認定制度を活用してリサイクルを進める取り組みをしています。有効な取り組みですが、衣料品全体に占める企業ユニフォームの割合は決して大きくないので、その効果も限定的なものになってしまいます。一部のアパレル企業が使用後自社製品の店頭回収を実施していることを書きましたが、これもかなり限定的な取り組みです。

服を構成する部材と素材>の項参照

これまで見てきたように、衣料品のリサイクルについては、実際のリサイクル工程の前に回収・素材分別という越えなければならない高いハードルがあります。さて、その高いハードルを越えた先はどうなっているのでしょうか?

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