号外:コロナ禍の旅行業界で、気候非常事態宣言が広がる

言うまでもなく、感染症拡大の影響で、旅行業界、観光業界は大きなダメージを受けています。しかし旅行者や自動車が消えた観光地を見れば、観光が環境に与えるダメージを再認識することにもなります。今だからこそ、感染症後のより持続可能な観光のあり方について、業界と旅行者の双方で、もう一度良く考えてみる必要があります。

2021年1月20日付けSustainable Brands Japan電子版に掲載された記事より、

厳しい状況に置かれている旅行業界で、気候非常事態宣言の波が広がっている。2016年12月、オーストラリア・ダレビン市議会は気候非常事態宣言を発表した。メルボルン郊外に位置する同市は、気候危機に対処する行動が必要だと認め、宣言を発表した最初の議会だ。それ以来、33ヶ国、1850以上の地方行政、個人事業、各種機関などのコミュニティが気候非常事態宣言を行っている。さらに、2020年には新型コロナウイルス感染症の拡大によってほとんどの国外旅行が禁止されたにも関わらず、ツーリズム業界の気候危機への連携した取り組みが広がっている。

観光業界の専門家たちは長年、環境保全の話題を避けてきた。膨大なCO2の排出量に責任があるにも関わらず、問題に対処する必要があることをその場しのぎのように認めてきただけだった。2007年、そして2010年以来、それぞれカーボンニュートラルを達成している米ナチュラル・ハビタット・アドベンチャーズ(Natural Habitat Adventures)や豪イントレピッド・トラベル(Intrepid Travel)などの企業は、サステイナビリティ事業の一環として、環境関連イニシアティブを設立。米アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(Adventure Travel Trade Association)のような機関は、気候変動に取り組む必要性を訴え、加盟者が行動を起こす後押しをするプログラムを発表している。”

2020年に入るまで気候変動問題に対する結束力がなかった業界だったが、業界全体が問題を認識し、ツーリズム業界の気候非常事態宣言「Tourism Declares a Climate Emergency」(以下、ツーリズム宣言)によって、初めて一丸となって気候変動問題の解決に取り組むために集結している。ツーリズム宣言は、公式に気候非常事態宣言を行った旅行機関、企業、専門家によるコミュニティだ。 コミュニティの参加者は、共同で解決策を追求し、互いに活動を支援しあい、観光業と気候変動の間に存在する難しい課題について話し合いを継続する。2020年1月に14団体の署名で始まったツーリズム宣言は現在、旅行業者や貿易協会、宿泊施設、メディア、旅行代理店、地域航空会社を含む143の加盟者がいる。10月には、ビジット・スコットランド(Visit Scotland)が気候非常事態宣言を行った最初の観光地となった。”

“新型コロナウイルスが観光業に与えた壊滅的な影響を考えると、観光業にとって気候非常事態宣言を行う理想的なタイミングは今ではないようにも思える。しかし、このパンデミックは飛行機の飛ばない世界のポジティブな影響を明確に浮き彫りにし、多くのコミュニティが国際観光業に依存していたことを露わにし、観光業全体に今後どのように運営して行くか深く考える時間を与えた。

観光業界の担い手たちは共に気候危機に取り組み始めている。観光業の行動は、人々に気候変動に対する意識を呼び起こし、旅行者や地方自治体にも積極的な関与、行動の変化を促すことができる。ツーリズム宣言によるこのような波及効果は、人々が再び自由に旅行を始める際に、ますます重要になる。

“観光業は、旅行者が楽しみを通して知り、学び、世界の素晴らしさを体験するお手伝いをするという目的を持っている。その一方で、そのことが地球環境にダメージを与えかねないことも認識している。我々には一つの地球しかなく、常にバランスを意識して行動しなければならない。観光業は、ビジネスの中に気候変動対策を取り入れる必要があるだけでなく、ゲストと気候変動について有意義なコミュニケーションを実現しなくてはならない。ゲストが、旅行を通して地球環境のサステイナビリティについて新たな視点を得て帰路につくことができれば、観光業は世界により良い変化を促すことができる。

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