号外:2050年カーボンニュートラル、求められる新ビジネス

日本でもこれから2050年に向けてカーボンニュートラルに向けた取り組みが進展することが見込まれます。しかし、その取り組みは建物や工場の設計から始まり、動力や電源の転換と調達、そのマネージメン、設備や製品の高度化や効率化など非常に多岐にわたります。そのためひとつの企業や自治体が全てを自前で賄おうとすると、非常に高いハードルになることが懸念されます。カーボンニュートラルへの取り組みで先行する欧州では、総合的な脱炭素ソリューションを提供することをビジネスとする企業があります。

2021年2月2日付け日経クロストレンド電子版に掲載された記事より、

カーボンニュートラル

“2020年10月、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現すると表明し、グリーン成長戦略を打ち出した。これを受け、自治体や企業、業界団体なども相次いで2050年カーボンニュートラル目標を発表している。ただ、実現に向けて具体的なマイルストーンまで示し、それを実行していくのは非常に高いハードルがある。というのも、脱炭素実現に向けた技術面などの不確実性は大きいからだ。実は、こうした課題を抱える自治体や企業の支援をビジネスにしている事業者が欧州にいる。欧州エネルギー大手事業者のEngie(エンジー)だ。”

“電力・ガスの供給で世界2位の売上高を誇り、産業用エネルギーの小売りに強みを持つEngieは、Zero-carbon transaction as a Serviceに注力することを発表。脱炭素ソリューション市場でのリーディングカンパニーを目指している。これは脱炭素を目指すグローバルトップ企業や自治体を対象としたサービスで、エネルギー転換戦略、設備設計、エンジニアリング、デジタルプラットフォームの構築、オペレーション、設備保有、資金調達など、脱炭素に向けた総合的なサービスを提供するものだ。

Engieのサービスバリューチェーン

“電球のLED化による省エネに始まり、再生可能エネルギーの導入、エネルギーマネジメント、電気自動車(EV)の普及拡大に向けた充電ネットワークの構築、ファシリティーマネジメントなどサービスは非常に多岐に及ぶ。CO2削減に向けて追加の設備投資が必要になる場合は、同社がそれらの設備を保有し、エネルギーをサービス化して販売する。エネルギーはコモディティーであり、それだけでは他社との差別化が難しい。そこで、エネルギー供給サービスの比重を減らし、各々の顧客ネーズに沿ったテーラーメイドのソリューション提案を強化しているのだ。

“ただ、同社もまだ多くの脱炭素コンサルティング契約を獲得できているわけではない。今は将来の事業拡大に向けた足場固めを進めている段階で、最近の契約事例を見てみると、様々なサービスを提供していることが分かる。建物の建設やリノベーションなどの設備検討段階から関与し、エネルギー供給やエネルギーマネジメントサービスの提供、さらにはエネルギーのみならずファシリティーマネジメントまで行っている。足元では特にファシリティーマネジメントの強化に注力しており、各国の有力企業の買収を進めている。エネルギー関連設備のみならず、ファシリティ部分にも総合的に関与する狙いだ。例えば、病院向けのファシリティーマネジメント契約では、医療行為以外(清掃、駐車場管理、食事、洗濯、会計など)は全て同社が行っている。病院側は本業のみに注力し、それ以外は全て同社にまかせればよい仕組みになっている。将来的には脱炭素戦略を考えるのはファシリティーマネジメント事業者になる可能性が高いため、その実績を積み上げることで将来の需要を囲い込めるというわけだ。

“また、このビジネスモデルの中でデジタルが果たす役割は大きい。Engieの顧客とのサービス契約期間は10年を超えるものがほとんどであり、中には50年のものもある。契約期間中に様々なデータを蓄積し、そのデータを活用することでサービスの効率化を図り、長期安定的に収益を拡大していくビジネスモデルを目指している。”

1990年~2010年でエネルギー消費効率はマイナス10%改善に対し、2012年~2030年までに我々が達成しなければならない省エネ割合はマイナス35%で、これは1970年~1990年のオイルショック後の実績に相当する。脱炭素に向けたビジネスはこれからますますニーズが高まると考えられる。自治体や企業により事業環境や抱える課題は様々であり、気候変動への対応には個々にカスタマイズしたソリューションが求められるようになる。その際に必要となるのは、EngieのZero-carbon transaction as a Serviceのような取り組みではないだろうか。”

この記事を読むと、脱炭素社会を現実的に、効率的に実現するためにはEngieが提供するようなサービスが必要ではないかと思います。しかもその点に着目して、欧州では先手を打って事業化を進めている企業があることに驚かされます。脱炭素社会の実現にはエネルギーの調達(再生可能エネルギーの活用拡大)、その効率的な使用、CO2の排出削減、排出するCO2の回収と再利用など総合的なエネルギー・エンジニアリングが必要です。脱炭素ソリューション・ビジネスの市場は巨大なものとなるでしょうから、是非、日本企業もその技術力と総合力を活かして参戦して欲しいと思います。

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