号外:再生可能エネルギー発電拡大のボトルネック、地域間送電網の増強

日本は、2050年の脱炭素に向けて再生可能エネルギー発電を拡大しなければなりません。再生可能エネルギー発電は発電量が時間帯や気候によって影響される面があり、安定的な電源として利用するためには、蓄電システムや地域間で電力を融通するための余力ある送電網が必要になります。

2021年4月15日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“経済産業省や電力広域的運営推進機関(広域機関)は地域間送電網の容量を最大2300万キロワット増強し、現行の2倍とする計画案をまとめた。北海道と関東、九州と本州の間などで複数のルートを新増設する。再生可能エネルギーの主力となる洋上風力発電の大量導入に向けて、欧州などに比べて遅れていた広域の送電インフラ整備がようやく動き出す。

地域間送電網増設のイメージ図

“政府は2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。達成に欠かせない再生可能エネルギーの普及は送電網の弱さが足かせとなってきた。太陽光発電が盛んな九州では、送電網の容量不足で出力制御を迫られる事態が頻発する。欧州は国境を越えて電力をやりとりする国際送電網が広く張り巡らされている。各国は電力の2割程度を輸出入しており、発電量の変動が大きい再生可能エネルギーの普及を後押ししてきた。”

日本は地域ブロック間で電力をやりとりする仕組みが十分に整っていない。地域独占を長く続けてきた大手電力各社が競争を敬遠し、広域融通に消極的だったことが背景にある。地域間送電網の利用実績は2019年度時点で874億キロワット時と、日本の総発電量(約1兆キロワット時)の8.5%にとどまる。経産省と広域機関は電力を需給バランスに応じて広域で効率よく使えるようにするため、地域間送電網の増強案を大手電力会社を交えて検討してきた。整備費用などの詳細を詰めて4月中に公表する。”

再生可能エネルギーの柱となる洋上風力発電は2040年までに原発約45基に相当する4500万キロワットを導入する目標がある。これは年間の発電量に換算すると約1300億キロワット時程度となる。単純計算で今の日本の総発電量の1割ほどをまかなえる規模だ。送電網の増強案は、洋上風力発電の8割が立地に適した北海道、東北、九州に集中する前提で、首都圏や関西圏など遠隔の大消費地に電力を円滑に送れる体制を整える。

“北海道と関東を結ぶルートでは海底ケーブルを日本海側と太平洋側に敷設する。容量は800万~1200万キロワットを見込む。現在、北海道と東北を結ぶ送電網(90万キロワット)の10倍前後の容量となる。北海道と東北を海底ケーブルで結び、東北から関東には陸上の送電網を使う構想もある。本州と九州や四国などを結ぶ系統も増強する。関門海峡を通るルートで140万~280万キロワットを想定する。東日本と西日本の間では異なる周波数の変換装置も必要だ。今の能力は210万キロワットと、東京電力管内のピーク需要の約4%分にとどまる。420万キロワットまで増強する案がある。”

“洋上風力発電が北海道、東北、九州の3地域以外の各地に分散する場合は必要な増強量は減るため、今後策定する次期エネルギー基本計画を踏まえてさらに見直す。経産省は再生可能エネルギーの導入量が膨らむ場合でも、全体として最大2倍の増強で対応できるとみている。”

“送電網の敷設作業は各電力会社の送配電部門が担当する。事業費は合計で数兆円に達する可能性がある。2020年に成立した改正再生可能エネルギー特措法に基づき、電気料金に上乗せして賄う仕組みの活用を視野に入れる。工事計画の策定や用地確保に時間が必要になるため、送電網の整備に着手するのは早くても2022年以降になりそうだ。増強が実現し、電力料金への反映が始まるのは2030年代と見込む。地域間の電力融通が拡大すれば競争原理が働き、より安いグリーン電力が消費者に届くようになる可能性もある。

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