号外:急浮上するCCUS(CO2回収・利用・貯留)-②

前回に続いてCCUS(CO2回収・利用・貯留)についての話題です。CCS(貯留)で大気に放出されるCO2の量を削減するわけですが、もう一歩進んで、排出されたCO2を再利用する(CCU)技術開発も進められています。

CCUSは油田やガス田を中心に導入が進んだため、日本には商用規模の施設がない。ただしNEDOによると、日本近海の海底下にはCO2の貯留に適した地層があり、活断層から5km以上離れているという条件で絞り込んでも、1200億t弱のCO2を貯留できる可能性があるという。これは日本の排出量のおよそ100年分に相当し、ポテンシャルは大きい。地下深くの砂岩など、岩石の中に隙間がある層までパイプを伸ばし、CO2に圧力をかけて押し込む。この地層の上に、泥岩などCO2を通さない層がある場所が貯留の適地で、粘土質の層が蓋の役割を果たし、CO2を閉じ込める。CO2の一部は地層内部の水に溶け込んだり、岩石と反応して鉱物になったりする。

“国内では北海道苫小牧市の沿岸に実証施設があり、2016年~2019年の間に、隣接する製油所で生じた30万tのCO2を回収して、海底下1000m以深の地層に貯留した。現在はモニタリングを続けている。圧入量では各国の大規模プロジェクトに及ばないが、2つの点で世界の注目を浴びている。”

北海道苫小牧市のCCS実証施設

“一つは、地上施設から海底下に向けて斜め方向にパイプを伸ばす難度の高い方式である点。もう一つは、人口密集地のすぐそばで実施する世界に例を見ない事業である点だ。国内で商用規模のCCSを導入する際には、地域住民の理解が不可欠になる。CO2が大量に漏れ出るようなことがあれば、健康や生態系に対する影響が懸念されるからだ。苫小牧の実証事業では、地上と地下の各所に地震計や温度や圧力に異常がないか計測するセンサーを配置し、そのデータを公開してきた。東日本大震災で、「絶対安全」と国や事業者が言い続けてきた原発が未曽有の事故を起こし、公的事業に対する国民からの目は格段に厳しくなった。「安心してください」という言葉ではなく、最大限の情報を迅速に示すことが信頼の基礎になる。

CCSは適地の選定や地域の合意形成に時間を要することもあり、政府は様々な分野でCO2を産業利用するCCUも模索している。CO2はドライアイスや溶接などに直接利用できる。また、ポリカーボネートのような樹脂の原料として使えるほか、水素と反応させてメタンやメタノールのような燃料を合成することもできる。中でも注目されているが、大成建設が2月に発表した、コンクリートの中にCO2を蓄える技術だ。”

大成建設のセメント代替技術の製品

コンクリートの主原料であるセメントの代わりに、CO2とカルシウム成分に熱を加えて反応させた炭酸塩(炭酸カルシウム)と、製鉄の副産物である高炉スラグを使う。1m3で2.3tの質量があるコンクリートの中に、70~170kgのCO2を固定できる。従来、コンクリートの製造によって生じるCO2の9割はセメントの製造過程によるものだった。だからセメントを使わず、CO2を原材料に利用するという二重の削減効果がある。炭酸カルシウムの生産などで生じるCO2を加味しても、製造過程でのCO2排出量を1m3当たりマイナス55~マイナス5kgにできるという。つまり、つくるほどCO2の排出削減につながるのである。製造には既存のコンクリート工場の設備がそのまま利用できるほか、普通コンクリートと同等の強度を持ち、流動性などの施工性もほぼ変わらないため、幅広い用途で従来のコンクリートと同じように使える。”

大量のCO2を地中に送り込むCCSに比べて、産業利用では処理できるCO2の量が少ないケースが多い。その点、様々な都市インフラに使われるコンクリートは、大量のCO2を蓄えられる可能性があり、長期間安定してCO2を固定することもできる。ただし、量産に向けた課題は残る。素材メーカーなどでCO2を用いた炭酸カルシウムの生産体制が未整備なこと。もう一つは、建築基準法の制限によって、生コンクリートを建物に使用するには都度、大臣認定が必要になる点だ。大成建設は、「引き合いは強く、サプライチェーンやルールの整備が進めば、量産効果によってコストを下げることが可能になる。2030年までに一般のコンクリート並みの10kgあたり300円を実現したい」としている。”

CCUが可能な分野は多岐にわたる。ただし気を付けなければならないのは、CO2を利用すること自体を目的化してはならないという点だ。ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点に立って、CO2の削減に本当に有効か、経済的に意味があるかを検討することが重要だ。CO2の回収や利用に、大量のエネルギーを用いては元も子もない。省エネルギー設備や再生可能エネルギーの開発・導入にコストを割く方が合理的との指摘もある。生じてしまったCO2を、いわば「無かったこと」にできるCCUSは、温暖化時代の「夢の技術」にも見える。だが、技術開発や資本整備の費用対効果、そして実際に社会に導入できる時期などを見極めながら、使い方を冷静に検討しなければならない。その上で、適切な技術がスムーズに普及するように、障害となる規制を緩和し、炭素の排出に価格をつけて抑制するカーボンプライシングの制度など、投資を後押しする仕組みの整備を急ぐ必要がある。”

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