「無印」衣料、半分が男女兼用に

これまでにも「ユニセックス(男女兼用)」な衣料品や雑貨等はありました。Tシャツやパーカーなどカジュアルなものが多かったように思います。「無印良品」は、多様な消費者に配慮して、男女兼用の衣料品を拡充する計画です。生産・販売の商品数を絞り込むことによって、事業効率をアップする効果もありそうです。

2021年6月7日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”「無印良品」を展開する良品計画が来春にも衣料品の半分を男女兼用にする。兼用品で多様性への配慮を求める消費者の意識の高まりに対応するとともに、商品数を絞り込んで効率化にもつなげる。LGBT(性的少数者)など多様な消費者に配慮した取り組みは欧米企業が先行するが、国内市場でもアパレル各社が動き始めている。”

無印良品の男女兼用コレクション

”良品計画は今年の春夏の商品で、パーカーなどで男女兼用品を25商品そろえた。今秋冬ではさらにコートやカットソーを追加して全商品の最大3割程度を兼用品にし、2022年春には靴下などを除く衣料品の半数の250品目程度を兼用品とする方針だ。「男女別の衣料品という固定概念を壊すことは、(良品計画の)ブランドの方向性と合致する」(同社)としている。シンプルなデザインが特徴の同社の衣料品は男女兼用を増やしても、従来の顧客層のニーズに応えられると見込む。店では兼用品の売り場を1ヶ所にまとめ、心と体の性が異なる消費者も利用しやすくする。店員も男女兼用品を身につける。中国や欧米など海外の店舗にも同様の売り場を設ける方針だ。良品計画の担当者は「今春の発売以降、売れ行きが好調なため早期に商品数を増やしたい」と話す。”

”現在、男性向けと女性向けは類似の商品でも性別ごとに寸法が異なる。今春夏シーズンで用意した兼用品はゆったりと着られるデザインにし、男性用と女性用でボタンの位置が異なるシャツも、ひもで留める形にして商品の性差をなくした。店頭で扱う多くの衣料品は「XS」から「XL」まで5つのサイズがあるが、兼用品では小さめのS、M、大きめのLという3サイズに絞り込む。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、同社は衣料品を中心に2020年5月時点で400億円弱の過剰在庫を抱えた。兼用品ではサイズを絞ったうえで対象顧客層が広がるため販売機会が増える。消費者に受け入れられれば、在庫となるリスクを抑えられると見込む。“

多様性に配慮した取り組みは欧米のアパレル企業で先行している。アパレル世界最大手のインディテックス(スペイン)は主力ブランド「ZARA(ザラ)」で2016年に男女兼用商品の取り扱いを始めた。ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M、スウェーデン)も2019年初に新興ブランドと組んで靴やアウターをそろえた。日本でもオンワードホールディングス(HD)が4月に子会社を通じて男女兼用商品の専門ブランド「IIQUAL(イーコール)」を立ち上げた。紳士服大手の青山商事も4月に男女兼用商品の取り扱いを始めるなど動きが出始めた。電通傘下の研究機関、「電通ダイバーシティ・ラボ」が2020年12月、日本の消費者約6万人を対象にした調査によるとLGBTなどに該当すると答えたのは約9%だった。これは左利きや血液型がAB型の人とほぼ同じ割合だ。LGBT層による国内消費市場を約5兆4000億円と推測しており、百貨店やホームセンターの市場規模(約4兆円)より大きい。衣料品や靴などファッション関連だけでもLGBT層の消費は2800億円にのぼる。

LGBT関連の市場規模

”一方で社会の対応は遅れ、LGBT総合研究所(東京・港)の2019年の調査ではLGBT層の約半分が「誤解や偏見、理解の促進に対しての企業の対応が必要」と回答した。企業が多様性に配慮することは、社会的な機運が高まる中で持続的な成長に必要な条件となりつつある。ただ、先行する欧米企業も兼用商品の扱いは期間限定品などにとどまる。良品計画のような大手企業が通常のブランドで男女兼用品の割合を半分に増やす取り組みは珍しく、注目を集めそうだ。

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