焼却処理の限界:大阪湾フェニックス計画

今回は少しちがった視点からの考察です。初回で、使用後衣料品の74%はリユースもリサイクルもされずに直接焼却されているというデータを引用しました(実際はもっとたくさんの廃衣料が直接焼却されているとも言われています)。リユースされた古着も、リサイクルされた繊維製品も最後は廃棄物になりますから、最終的にはほぼ100%の廃衣料が焼却されていることになります。焼却処理は各自治体の焼却場で行われます。廃衣料を含めた可燃ごみを焼却すればCO2が排出されます。焼却する際にサーマルリサイクルとして熱エネルギーを回収して利用している施設もあります。

焼却しても可燃ごみが完全に消えてなくなるわけではありません。焼却後には焼却灰が残ります。この焼却灰は最終処分場へ運ばれ、安全性を確認したうえで最終処分(埋め立て)されています。この意味で焼却を中間処理ということもあります。実はこの最終処分場の能力がひっ迫してきています。

私が住んでいる近畿圏では、6府県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)が協力して最終処分場を運営しています。これを「大阪湾フェニックス計画」といいます。

大阪湾広域臨海環境整備センター」のHP

近畿圏の内陸部はすでに高密度の土地利用が進み、個々の地方自治体や事業主が最終処分場を確保するのは極めて困難な状況です。そこで長期安定的に、また広域に廃棄物を適正に安全に処理するために生まれたのが大阪湾の埋め立てによる「大阪湾フェニックス計画」です。埋め立てによってできた土地は港湾の秩序ある整備に活用されます。また運営においては環境保全を最優先にした厳格な管理体制がとられています。現在は4か所の埋め立て場所が稼働しています。「泉大津沖埋立処分場」「尼崎沖埋立処分場」「神戸沖埋立処分場」「大阪沖埋立処分場」の4か所です。

大阪湾フェニックス計画

「大阪湾フェニックス計画」の埋め立て期間は平成元年から約44か年となっています。今年は令和元年(平成31年)ですから、あと13年あまりで能力の限界を迎える可能性があります。運営側ではその後のことも検討されていると思いますが、そもそも最終処分場を確保するのが難しいという状況から生まれたのが「大阪湾フェニックス計画」ですから、そう簡単に次の段取りができるというものではないでしょう。まだ13年あると思うのか、もう13年しかないと思うのか人それぞれでしょうが、焼却灰の最終処分という側面からも焼却するごみの削減が必要であることはまちがいありません。

衣料品について考えると、3Rを促進することで一定期間内の廃衣料焼却量を減らすことはできます(最終処分場を長持ちさせることはできます)。しかしいったん製造された衣料品は、リユースしてもリサイクルしても最終的には廃棄物になります。ケミカル・リサイクルがうまくいったとしても、永遠に循環させて使い続けることはできないと思われます。もちろんこれは衣料品だけの話ではありません。日本ではリサイクルできない廃棄物は焼却処理されますから、すべての廃棄物において「減量」を考えてゆかねばなりません。そうしないと、そのうち廃棄物の処理に行き詰ってしまうということになりかねないのです。ここにもサステイナビリティの大きな課題があります。

日本で焼却せずに廃棄物を処理できるでしょうか。焼却すればCO2が発生しますが、焼却しなければその分のCO2排出を抑制することができます。焼却灰の埋め立て地がひっ迫してきているのですから、焼却せずに埋め立てる場所を見つけることはできないでしょう。また焼却せずに埋め立てると、土壌汚染の問題が発生する懸念があります。焼却せずに、埋め立てずに廃棄物を処理する方法はないでしょうか。ないしは焼却や埋め立て以外で処理できる製品や材料はないのでしょうか。すべてのものを同一レベルで考えることはできません。万能の解決策なんて存在しないでしょう。それぞれの製品分野で少しずつでも焼却する廃棄物を削減することはできないでしょうか。

マイクロプラスティックの海洋汚染に関係して、使い捨てプラスティックを紙等の自然物で代替することを紹介しました。

ドイツにて>の項を参照

自然物であれば自然の中で分解されます。また焼却したとしてもカーボンニュートラルということになります(自然由来のものを焼却しても当然CO2を排出しますが、もともとそのCO2は植物などが成長する過程で大気中から吸収したものであり、トータルとしてCO2の量は変化しないという考え方)。その一方で日本人には馴染みの深い割り箸ですが、1年間で250億膳の割りばしが使われ、およそ50万トンの割り箸が焼却されているとのことです(「大阪湾広域臨海環境整備センター」のHPより)。これはカーボンニュートラルというよりも、「マイ箸」で焼却量を削減するべきですね。環境配慮、環境貢献というのはこのようなひとつひとつの積み重ねが大切なのだと思います。衣料品の分野で、小さくても環境配慮ができる方法を考えてゆきたいと思います。

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