アメリカのごみ事情:アウターループごみ処理場
私と家族が以前アメリカに住んでいたことをご紹介しました。日本とアメリカではごみ処理の事情もずいぶん違います。日本では一般家庭から排出されるゴミは行政が処理しています。費用は税金で賄われていますから、ゴミ処理費用として負担することはありません。アメリカではごみの収集・処理は民間企業が行っています。普通ごみ(可燃、不燃の区別は特になく)は大きなごみバケツに入れます。大人が入れるくらい大きなごみバケツです。我が家のキッチンシンクにはディスポーザー(生ごみ粉砕機)が設置されていたので、生ごみは下水として処理されました。ペットボトルや缶はリサイクルされるので、これは専用のコンテナに入れます。そしてそれぞれの収集日にごみバケツやコンテナを家の前に出しておくと、大きなごみ収集トラックがやってきて収集してくれます。後には空のごみバケツとコンテナが残されます。日本のようにごみ袋に入れて、近所のゴミ・ステーションまで持っていく必要はありませんでした。料金は収集日毎のごみバケツの数で決まっていて、リサイクル分は無料です。3か月毎に請求がきて、小切手を送って支払っていました。
余談ですが、クリスマスから新年にかけてアメリカの家庭ではクリスマスツリーを飾り付けます。日本ではプラスティック製のツリーに色々なオーナメントを飾り付けますが、アメリカでは小さな(家のサイズに合わせて)本物のモミの木を買ってきて、それに飾り付けをする家庭が結構あります。クリスマスが近づくと近所の農園に行って、モミの木を買ってくるのです(その季節にはモミの木専用売り場が出現します)。年が明けてしばらくすると、その年のモミの木はお役御免になります。すると不要になったモミの木の回収日が決まっていて、その日に家の前に出しておくと、ごみ収集車が持って行ってくれます。やはりやることのスケールが違いますね。
日本では家庭から排出されるごみの大部分(リサイクル用の資源ごみ以外)は焼却されます。アメリカでは普通ごみは埋め立てられます。埋め立てなので、特に可燃、不燃の区別はしていません。アメリカの国土は広大です。都市部から1時間も車を走らせると、特に何もないような原野、荒野をいたるところで目にします。そのような場所に、ごみ処理企業が運営するごみの埋め立て処理場が設けられています。ケンタッキー州にあるアウターループというごみ処理場を訪れたことがあります。敷地は782エーカー(約316万平米)で、東京ドーム67個分ぐらいの広い施設でした。そこにひっきりなしに大型トラック(ごみ収集車)がやってきて、ごみを下ろしてゆきます。埋め立てが終わった区域はその後10年間ぐらい環境モニタリングされます。一般ごみでは可燃、不燃の区別を特にしていないので、埋め立て後に一部が分解されて、メタンガスや浸出液が発生します。これらが周辺環境に悪影響を及ぼさないように管理しているのです。モニタリング・データを確認して、分解されるものの分解が終わった状態を「安定化した状態」としています。アメリカでは、埋めた後に変化しないごみ(プラスティック、金属、コンクリート等)は安定したゴミで管理しやすく、分解するごみ(生ごみや紙類)は不安定なごみで管理に手間がかかるという感覚のようです。安定して長期間埋め立て地に残るものは土壌汚染とはあまり考えていないように思われます。「安定化」した埋め立て地は、更に整地が施され、緑地などへの有効活用が図られているようです。アメリカでは、ごみをきちんと管理して安定化させ、埋め立て地を有効活用することもサステイナビリティの一環と位置付けられています。
クリスマスツリー(モミの木)の話をしましたが、アメリカではYard Wasteといって植物ごみ(庭の芝生や木を手入れした際に出る廃棄物)も結構あります。これらの植物ごみは同じ敷地内で堆肥化されています。できあがった堆肥(肥料)は近郊の農家に供給(販売?)されているようです。
アメリカのようなごみ処理の方法では、ともかく途方もない土地が必要になります。国土が狭く、特に平地が少ない日本ではとてもまねができることではありません。日本の場合は、ごみ処理の方法として焼却が前提になることは致し方ないのですが、焼却すればCO2が発生しますし、これまで見てきたように焼却するごみの量を削減することはどうしても必要です。再資源化が比較的容易なものについては、これまでに回収・再利用の仕組みが作られています。これからは、これまでの取り組みや技術ではなかなか再資源化できなかったごみを再資源化してゆかねばなりません。再資源化しにくい廃棄物の典型が衣料品です。なぜ衣料品が再資源化しにくいのかについては、これまでに色々と考察してきました。しかしこれを何とかしないと焼却する廃棄物の削減(サステイナビリティ)は進展しないと思います。