号外:新型コロナウイルス感染症の環境への影響②、CO2排出量削減と大気汚染や水質の改善

前回はコロナ禍におけるプラスティックごみに対しての影響でしたが、今回はCO2排出量、大気汚染や水質改善についての影響です。引き続き、

2021年3月23日付でYahoo JapanのサイトGyoppyに掲載された記事からの情報です。

”プラスティックごみの増加のようなマイナスの影響があった一方で、プラスの影響もあった。コロナ禍がもたらした最も大きな変化といえば、人々の移動の減少だろう。各国政府は市民に対し、感染拡大を抑えるため、不要不急の外出を控えるよう呼び掛けた。同時に、国境や県境をまたぐ移動を制限し、ステイホーム(自宅で過ごすこと)や在宅勤務を奨励した。こうした施策は、温室効果ガスの排出に多大な影響を与えた。

”国立環境研究所などが参加する国際共同研究グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)は、2020年の世界の化石燃料消費によるCO2排出量について、前年比で約7%減少するとの見通しを発表した。下げ幅は過去最大という。各国で都市封鎖や移動制限が行われたことで、自動車や航空機など運輸部門からの排出が大きく減ったのが影響した。製造など産業部門からの排出量は春に減少したものの、既に前年の水準またはそれ以上に戻っている可能性があるという。国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、2020年の世界の電力需要は前年比約2%減となり、発電由来のCO2排出量も大幅に減った。商業・産業用の減少分が、外出自粛や在宅勤務によって増えた各家庭での住宅用需要の増加分を上回ったためだ。ただ、IEAは2021年の電力需要は3%増と、世界経済の回復に伴い再び増加すると見込んでいる。排出量が多い4つの国・地域を比較すると、米国が12%減、欧州連合(EU)が11%減、インドは9%減と、軒並み大きく下がった。一方で、世界最大の排出国である中国は、早期に感染を封じ込め、経済活動を再開させたことで、1.7%減にとどまった。”

ただし、コロナ禍でCO2の排出は一時的に減ったものの、それまでずっと増え続けていたので、大気中のCO2濃度は過去最高になった。米航空宇宙局(NASA)によれば、2020年の世界の平均気温は2016年と並び、観測史上最高だった。CO2など温室効果ガスの増加に加え、コロナ禍による経済活動の停止で大気中の粒子状汚染物質が減り、日光が地表に届きやすくなったのも影響したという。GCPは、新型コロナウイルス感染症の収束や、各国政府による景気刺激策により、CO2の排出量は今後元に戻る可能性もあると警告した上で、森林破壊の阻止や再生可能エネルギーの導入、ウォーキングやサイクリングの奨励といった対策を強化するよう訴えている。”

感染症対策で工場の閉鎖や移動制限が行われ、経済活動が縮小したことで、空気や水がきれいになったとの報告が世界各地で上がった。インドでは、全土で大気汚染が改善し、北部のパンジャブ州では数十年ぶりに、遠く離れたヒマラヤ山脈が見晴らせるようになった。イタリアのベネチアでは、観光客や水上交通が激減したことで、運河の水が澄んで見えるようになった。大気汚染や水質の改善は、NASAの研究でも裏付けられている。同局は2020年11月、大気汚染物質の二酸化窒素(NO2)について、世界の濃度が2月以降、20%近く低下したとの調査結果を発表した。輸送や生産活動の停滞で、化石燃料の使用が減ったのが影響した。米ニューヨーク市西部を流れるハドソン川の一部では、通勤客の減少により、濁度が40%以上低下したことが衛星データなどで確認されたという。”

“経済活動を止めれば、環境は幾分改善されるかもしれないが、我々は生計を立てたり、余暇を楽しんだりすることが出来なくなる。新型コロナウイルス感染症は、人間と自然の共存の難しさを改めて痛感させた。同時に、多くの人々に、空気や水がきれいになるといったメリットを享受させたことで、環境を犠牲にして成り立ってきたこれまでの「豊かな」生活を見直す機会を与えたように思われる

感染症によって半ば強制的に経済活動や人の移動が制限されたことによって、これまで改善が困難で避けられない日常(必要悪)のように思われていた大気や水質の汚染が、比較的短期間で大きく改善できることが実証されました。経済活動を止めることはできませんが、やり方を良く考えれば、状況を改善し、自然と共存することも可能だという視点を持つことができるようになりました。簡単なことではありませんが、非常に大きな代償を払って得られた教訓として、今後の施策に活かしてゆくべきだと思います。

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