号外:速まる温暖化、IPCCの最新報告が示す非常事態①

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は8月9日、これまでの予測よりも10年早い2021-2040年に世界の平均気温上昇が産業革命前から1.5度以上に達するという新たな予測を発表しました。すでに今年も国内外で異常気象が観測されていますが、今後も全世界で熱波の増加や温暖な季節の長期化が進行し、豪雨や干ばつなどの災害、海面上昇などの地形の変化が深刻化するとしています。また報告書は、温暖化の要因が人類の活動であることとは明白だと断言しています。

以下は、2021年8月11日付けのSustainable Brands Japanに掲載された記事からですが、IPCCの報告を基に、今後予想される深刻な事態を説明しています。大げさではなく、これはもう非常事態と呼べる内容だと思います。

IPCCは2018年に臨時発行した『1.5度特別報告書』で、気温上昇を2度ではなく1.5度未満に抑えることは人間が心身ともに安全・健康に暮らし、世界が抱える貧困などの社会課題を解決する上でも重要だと示した。例えば1.5度の上昇でサンゴ礁は70-90%、2度の上昇で99%が消失すると予測されており、世界人口が増え続ける中、1.5度は現在の生活を維持するために人類が守らなければならない限界値と言える。

”このほど新たに公表された「第6次報告書(第1弾:物理化学的根拠)」は2013-2014年の第5次報告書に次ぐもの。1990年の「第1次報告書」から5-7年ごとに報告書が発行されてきたことを考えると、次回の報告書発行時には手遅れなことが増えているかもしれず、気候変動を抑制できる最後の世代といわれている我々にとって無視できない重大な警告書だ。

”国際社会は現在、パリ協定の下で世界の平均気温の上昇を2度より十分に低く保ち、1.5度以下に抑えようと取り組んでいるが、世界の平均気温はすでに産業革命前(1850-1900年を基準とする)と比べて2011-2020年平均で1.09度上昇していることがわかった。2018年発表の特別報告書では、2006-2015年平均で0.87度上昇したと報告されており、依然として気温上昇に歯止めがかかっていない状態だ。なお、2018年の報告書から0.22度上昇したことになるが、このうちの約0.1度は予測技術の向上による増加分という。”

”現在の世界的な気候の変化は、数百年、数千年の歴史の中でも前例のない状態にあると報告書は指摘する。2019年の大気中のCO2濃度は過去200万年で最も高く、そのほかの温室効果ガスのメタンやは一酸化二窒素の濃度も過去80万年で最も高くなっているという。さらに1970年から現在に至るまでの50年間の気温は、過去2000年間でも例のない速度で上昇している。地球は寒冷期と温暖期を繰り返してきたが、2011-2020年の気温はおよそ6500年前の最新の温暖期(産業革命以前に比べ0.2-1.0度)を上回る高さに到達している。この間、北極海の海氷の面積は1850年以来最も小さくなり、1950年から世界規模で進む氷河の融解は過去2000年間でなかった現象だ。海面上昇も過去3000年の中のどの世紀よりも、1900年以降の上昇が急速に進んでいるという。“

こうした気候の変化は熱波や豪雨、干ばつ、熱帯低気圧などの異常気象として現れ、1950年以降、熱波などの極度の暑さは頻度と激しさを増し、一方で極度の寒さは減っている。海洋熱波の発生頻度は現在、1980年度比の約2倍に達し、豪雨も1950年代以降、増加と激化を続け、一部の地域では干ばつが増えている。報告書は、これが人間の活動の影響によるものということは科学的に明らかだとしている。

IPCCのシナリオ別年代別気温上昇予測

”IPCCは5パターンの排出量に基づくシナリオから将来的なリスクを予測している。しかしどのシナリオを検討しても、気温は今世紀半ばまで上がり続けるという。これまで世界の平均気温上昇は2030-2050年に1.5度に達すると予測されていた。しかし報告書によると、2021-2040年までに、温室効果ガスの排出量が非常に多いシナリオ(化石燃料に依存)、多いシナリオ(気候変動対策が限定的)、中間のシナリオ(各国の2030年国別削減目標を集計した排出量上限にほぼ等しい)で、産業革命前と比較して1.5度以上になる可能性が非常に高い。排出量が少ないシナリオ(2度未満に抑え、2070-2080年にCO2排出量が実質ゼロ)、非常に少ないシナリオ(約1.5度に抑え、2050-2060年にCO2排出量が実質ゼロ)でも1.5度を超える可能性が5割以上の確率である。”

”今世紀末(2081-2100年)には、排出量が非常に少ないシナリオで産業革命以前と比べて1.0-1.8度上昇(最良推定値1.4度)、中間のシナリオでは2.1-3.5度(同2.7度)、非常に多いシナリオでは3.3-5.7度(同4.4度)に上昇する可能性が高い。排出量を少ないシナリオ、非常に少ないシナリオに持っていかなければ、21世紀半ばには2度以上の上昇を迎える可能性が極めて高くなる。2度上昇すると、極度の暑さによって農業や健康の面で許容できる限界にさらに頻繁に達することになる。

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