号外:速まる温暖化、IPCCの最新報告が示す非常事態②:異常気象

引き続き、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が8月9日に発表した報告書からの情報(2021年8月11日付けのSustainable Brands Japanに掲載された記事から)ですが、人類の脱炭素が効果を上げなければ、報告書が描く21世紀後半の地球では、人類の生存自体が脅かされるような非常に過酷な環境になることが予測されています。いったん地球の環境バランスが崩れてしまえば、その変化(悪化)は不可逆的に進行します。これは「人間の活動が引き起こした災厄」なのです。今ならまだ間に合うかもしれません。次世代が暮らす地球環境を少しでも良い状態にするために、早急に最大限の努力をすることが、今生きている私たちの世代の責任だと思います。

”こうした温度上昇には地域差がある。北極の気温上昇は世界平均の2倍以上の速さで進む可能性があり、北極海では2050年までに少なくとも1回は9月末に海氷のない状態になることが予測される。温暖化の進行は異常気象を加速させていく。極度の暑さ、海洋熱波、豪雨の頻度や強度、一部地域での農地や生態系の干ばつ、台風などの強い熱帯低気圧の増加、北極海の海氷や積雪、永久凍土の減少などが予測され、仕事や食、健康、文化など暮らし全般に大きな影響をもたらす。気温が0.5度上昇するごとに熱波や豪雨、干ばつの頻度や強度が目に見えて増加し、1度上昇するごとに1日の降水量は約7%上がるという。“

継続的な温暖化は、降水量や湿度の変化といった地球の水循環を活性化させる。世界の陸地の降水量は2081-2100年までに、1995-2014年と比較して、非常に少ないシナリオで0-5%、中間のシナリオでは1.5%-8%、非常に多いシナリオでは1-13%増加する。季節風(モンスーン)による降水量は世界中で中長期的に増加し、特に南アジア、東南アジア、東アジア、西アフリカで増えることが予測されるという。

海の温暖化も進む。報告書によると、気候変動がもたらす地球の変化は数世紀から数千年にわたる不可逆的なもので、とりわけ海洋、氷床、海面上昇の変化は後戻りできない状況になっていくという。21世紀末までに、海の温暖化は温室効果ガスの排出量が少ないシナリオで1971-2018年の変化の2-4倍、最も排出量の多いシナリオでは4-8倍に達する。海面上昇は今世紀を通じて続き、沿岸の浸食や沿岸洪水の頻度・深刻さが増す。さらに、海洋の生態系に深刻な影響を与える海洋密度成層の強化、海洋の酸性化、海水中の酸素が減る海洋貧酸素化が増加し、海洋に関連する人々の暮らしにも影響が及ぶ。”

炭素吸収源にも変化が生じる。CO2排出量がこのまま増加すると、CO2を吸収する陸域や海域といった炭素吸収源の累積蓄積量が増えて吸収する割合が減り、大気中に残るCO2の量が増える。今世紀中に大気中のCO2濃度を安定化させるシナリオであっても、陸域や海域で吸収されるCO2の割合は21世紀後半には減少するという。”

“都市では人為的な温度上昇が一部で増える。都市化がさらに進むと、極度の暑さが頻繁に起こるようになり、熱波が深刻化する。都市上空や風下での降水量や豪雨が増加する可能性もある。沿岸部の都市では、海面上昇や高潮などの異常な海面現象と異常な降雨の頻度や河川の水量が増え、洪水の発生率が高まる。

”地域別に見ると、アジア全域でも温暖化は進む。アジア周辺の海面水位は世界平均よりも早く上昇し、海岸の浸食や海岸線の後退が発生している。海水温の極端な上昇が一定期間続く、海洋熱波は今後も増加すると予測される。21世紀半ばまでに積雪期間や永久凍土の面積はさらに減少する。東アジアの一部の地域では極端な降水が増加しており、豪雨の頻度と強度は今後も増し、山岳部では山崩れが起きやすくなるという。

報告書は、人間の活動によって引き起こされる温暖化を一定のレベルに抑えるには、CO2の累積排出量を抑え、少なくともCO2排出量を実質ゼロにすると同時に、その他の温室効果ガスの削減を強化していくことが必要だと結論付けている。さらに人為的にCO2の回収・除去を行うことで、大気中のCO2濃度を下げ、海域のCO2吸収量を低下させる要因となる海洋酸性化を改善していけるだろうとしている。世界のCO2吸収量が排出量を上回り、その状態を持続できれば、CO2によって引き起こされる気温上昇は徐々に逆転できると見込まれているが、地球の変化自体は数十年から数千年かけてすでに動き始めた方向へ進んでいくという。CO2が大幅に削減されたとしても、上昇する世界の平均海面水位が逆転するには数百年から数千年かかる。”

“温暖化の進行を厳しく指摘した今回の報告書の内容は、今年10月末から英グラスゴーで開かれるCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)での議論に引き継がれる。このCOP26では各国とも、今回の報告書に立脚した排出量削減に向けての強力な方針が問われてくる。”

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