アメリカ古着市場、2026年までに8兆円を超える予測

先般このHPで、日本の若者の間で古着ブームが起きていて、その背景には環境意識や倫理観の高まりがあるという話題を取り上げました。今回は、アメリカの古着市場についての話題です。

古着ブームの裏側に高まる若者の環境意識?①

古着ブームの裏側に高まる若者の環境意識?②>の項を参照

2021年8月6日付けでSustainable Brands Japanに掲載された記事より、

”婦人服や子供服、靴やアクセサリーなどを中心に、古着をオンラインで販売している米「スレッドアップ(thredUP)」は、2021年に出したレポートで、アメリカの古着市場の包括的な調査結果を発表した。3500人の消費者を対象とした第9回年次調査では、古着市場は現在の360億ドル(約3兆9500億円)から今後5年間で倍増し、770億ドル(約8兆4550億円)に達すると予測している。”

アメリカでの古着売買の様子

”今年の調査では、パンデミックが収束に向かう流れの中で、消費者の中古販売に対するポジティブな意識変化といった新たな動向も見られた。何百万着もの衣服の寿命を延ばすことが、ファッション業界における環境コストと財政コストを埋め合わせるために役立っていることが示された。レポートによると、スレッドアップはこれまでの中古販売事業により、4億5000キロのCO2排出量を削減し、新品の服を買う場合と比較して39億ドル(約4200億円)の節約に貢献しているという。”

”スレッドアップの共同創業者兼CEOのジェームズ・インラインハート氏は、「私たちは小売業の抜本的な変革の初期段階にいます。消費者は持続可能性を優先し、小売業者は中古販売の必要性を少しずつ認識し始め、政府は循環型経済に乗り出しています」と話す。”

古着の売買は定着しつつある

<注目すべき調査結果>

①古着販売はコロナ禍で成長し、収束後もさらに加速することが見込まれる。

2020年、初めて古着を購入した消費者は3300万人。今後5年間で中古品の購入を増やしていきたいと考えている消費者はそのうち76%にのぼる。中古販売は、アパレル業界の新たな市場チャンネルだ。小売業界の幹部を対象にしたアンケート調査によると、62%の幹部が「消費者はすでに中古販売市場に参加している」と述べており、42%が「中古販売は今後5年間でビジネスの根幹を占めてくる」と回答。さらに3人に1人が「中古販売が小売業界において当たり前になりつつある」と感じているという。一方、消費者を対象にした調査結果によると、「古着屋などで古くなったブランド服を買いたい」と答えた人が43%。さらに、「店頭で新品と同じようにブランドものの古着が売られていたら、古着を買いたい」と答えた人は34%だった。

②消費者の「リサイクルへの移行」の動きとともに、古着の購入が、ファストファッションや新品の衣服の購入に代わって台頭しつつあり、有害な生産を避けるための選択肢の一つにもなってくる。

中古市場は2030年までにファストファッションより2倍以上も大きくなると予想されており、倹約家の5人に2人が新品ではなく古着を購入したという。これまで新品を購入していた倹約家は、この1年間で平均して7着の古着を購入した。これは5億4200万着以上の新品が古着に置き換わったことになる。過去10年間で、66億5000万着の衣服が中古市場を通じて再び循環され商品として再販売された。消費者は中古品を購入することで3900億ドルを節約し、新品ではなく中古品を購入することで、526億キロものCO2が削減された。

③コロナウイルス感染拡大以降、消費者の価値観は変化し、中古の需要がさらに高まった。

ロックダウンにより、消費者は家に籠らざるを得ない状況が続き、この期間は結果的に、人々が何にお金を払うかどうかを考える機会となった。3人に1人は、パンデミック前よりもサステイナブルなファッションの選択に関心を持っているという。

Thred Up イメージ

”調査を実施した英グローバルデータ(GlobalData)の担当者は「パンデミックが明ければ、古着の需要はこれまで以上に高まっていくでしょう。人々は、ロックダウン中に家のクローゼットを一掃し、不要になった衣類を持続可能な方法で廃棄し、古着を購入するという方法に移行しています」と言う。「小売業界はこの変化を認識しているからこそ、続々と中古販売に事業を展開させているのです。こうしたトレンドにより、中古販売はアパレル市場の中で最も拡大する市場と言っても過言ではないでしょう」”

”耐久性の優れた中古品の需要が高まっていることは明らかで、ブランド品がリサイクル市場に繰り出していくことで、消費者のリサイクルへの移行はさらに加速するだろう。ブランドは中古品をより手ごろな価格で提供する必要がある。またそれをより「クールなもの」として売り出していくことも大切だ。Z世代と呼ばれる若者(1990年代後半から2012頃に生まれた世代)は、「循環型/サーキュラー」というキーワードを重視し、強い意志を持って商品を選んでいる。Z世代のこうした消費に対する意識は、小売業界の中古販売と回収システムという循環型消費を後押しする。“

”持続可能なアパレル企業の先駆者ともいえるPatagoniaは、「このジャケットを買わないで(Don’t buy this jacket)」というキャッチコピーを掲げ、本当にこの商品を必要としているかを顧客に訴えかけるというユニークな販売戦略を長い間続けてきた。そして同社は2013年に修理、返品、中古販売プラットフォームである「ウェア・ウェア(Wear Wear)」を立ち上げた。近年では、Levi’s、The North Face、Arc’teryx、Eileen Fisher、COSなどのアメリカ企業が、独自の修理と中古販売のスキームを構築している。”

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