米イーストマンケミカルのアセテート繊維「Naia TM」

米イーストマンケミカル社が製造するアセテート繊維「Naia TMが注目を集めています。アセテートとは、木材パルプ(セルロース)を主原料として、酢酸を化学的に結合して作った繊維で、半合成繊維です。アセチル基が3つ付いたものは「トリアセテート」、2つのものが「ジアセテート」です。通常、アセテートと言うとジアセテートを指します。絹のような優雅な光沢と手触りを持っています。トリアセテートは耐熱性に優れますが、吸湿性はジアセテートの方が優れています。国内では三菱ケミカルが生産しています。トリアセテートの商標は「ソアロン」、ジアセテートは「リンダ」です。両素材とも強度が弱いので、単独で用いられるよりも、ポリエステルなど他の繊維と複合して用いられる事が多いようです。

2021年12月20日付け繊研新聞電子版に掲載された記事より、

「Naia TM

“米化学メーカーのイーストマンケミカルが製造・販売するジアセテート繊維「Naia TMが、サステイナブル(持続可能)ファッションを目指すブランドから支持を集めている。レディス市場に乗り出して間もないが、グローバルSPAからラグジュアリーブランドまで浸透し、日本でも急速に販売を伸ばしている。昨秋には新たに、廃棄プラスティックをNaia TMの原料に再生する製造プロセスを確立し、「Naia TM Renew」として投入した。Naia TM Renewを通じて循環型のファッションを後押しし、「持続可能なファッションを全ての人に届ける」ビジョンを描く。”

” Naia TMは、木材パルプが主原料のセルロースアセテートファイバー。使用する木材パルプは全て、FSC(森林管理協議会)、もしくはPEFC(森林認証)を取得済みの適切に管理された森林と植林地から調達している。3社あるパルプサプライヤーは、工場の場所とともにウェブサイトで公開している。Naia TM Renewは、Naia TMの原料にプラスティックリサイクルを取り入れ、資源の循環性を向上させた。原料の60%が木材パルプ、40%がリサイクルプラスティックだ。セルロースアセテートファイバーは木材パルプに酢酸を化学的に結合させて作るが、その酢酸の原料となる分子ブロックを、独自のカーボン再生技術で廃棄プラスティックから生成した。この技術により、通常は埋め立て地に運ばれるようなリサイクル難易度の高いプラスティックも廃棄せず、価値ある商品に生まれ変わらせることに成功した。“

” Naia TMと同様、製造プロセスは安全で環境に配慮した化学物質を使用している。繊維のライフサイクル全体におけるCO2の排出量も大幅に削減する。環境に悪影響を与えることなく、生分解することが出来る「OK bio degradable」と「OK compost」の適合マークを取得しており、生分解性と堆肥化可能性を備えている。それぞれ、「OEKO-TEXⓇスタンダード100」、環境・社会的負荷を測定するツール「Higg Index」や「TUV Austria」など、第三者機関による認証を受けている。トレーサビリティー(履歴管理)も確立している。品質も従来品と変わらない。長繊維はシルクのように柔らかく滑らかで、優美な光沢やドレープを備えながら、イージーケア性も持ち合わせる。短繊維は柔らかく、濡れても早く乾く。毛玉ができにくいのも特徴だ。”

”イーストマンケミカルは「持続可能なファッションを全ての人に届ける」ビジョンを掲げている。Naia TMとして、持続可能な開発目標を持ち、地球に優しく、業界で働く人々や消費者にとってメリットのある健全なファッション産業を作る役割を積極的に担っていく考えだ。具体的には、2030年までに地球温暖化ガスのフットプリントを現在のNaia TMポートフォリオから40%削減、2025年までにリサイクル品の25%以上を廃棄繊維製品由来にする、2025年までに環境ソリューションにおいて自社の繊維製品研究開発リソースに75%を投資することなどを掲げる。Naia TM Renewも目標達成に大きくかかわっている。2025年までにNaia TM全体の50%、2030年までに90%をNaia TM Renewに置き換えるとしている。

”今年のNaia TMの販売量は全世界で昨年比30~50%伸びており、特に日本、中国、韓国、トルコで好調という。差別化素材の開発が好評であるうえ、技術サポートやマーケティング、ブランディングへの投資も奏功した。現在は世界で30以上のレディスブランドがコレクションにNaia TMを採用しており、消費者へのマーケティングやプロモーション活動にNaia TMのブランドロゴを使用しているという。日本で本格販売して半年だが、Naia TMの売れ行きは想定以上という。2021年はレディスアパレルを中心に、前年を50%上回る勢いで伸びている。現在の販売量は年1000トン以上で、中長期に年数千トンに押し上げる。

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