号外:「蓄熱発電」、再生可能エネルギー電力を熱で貯蔵

電力は需要と発電量を一致させないと停電が起こります。再生可能エネルギー発電は、天候で出力が変動します。再生可能エネルギー発電の拡大には、出力調整が必要です。蓄電池よりコストが安く、設備の大型化も可能な「蓄熱発電」が注目されています。

202年1月20日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

太陽光や風力発電など天候が出力を左右する再生可能エネルギーでつくった電力を熱などに変え、電池の5分の1のコストで大量にためられる「蓄熱発電」の大規模施設が2024年に登場する。独シーメンス系や、米アルファベットから独立した新興などが担い手だ。電力を数日ため再生可能エネルギー発電の出力を平準化する。脱炭素に向けた有望な技術として注目を集めそうだ。”

蓄熱発電の仕組み

蓄熱発電は電力を熱や化学エネルギーに変え、溶融塩や砕石に蓄える。再び発電する際には、熱から水蒸気をつくってタービンを回すなどする。蓄電コストは現時点で1キロワット時あたり約1万円とリチウムイオン電池の5分の1だ。設備を大型化すればさらに安くなる。”

再生可能エネルギー発電は天候で出力が変動する。電力は需要と発電量を一致させないと停電が起こるため、出力調整が必要だ。2010年代後半に欧州を中心に再生可能エネルギー発電が急速に普及すると、高価な蓄電池では電力を蓄えきれずに余り、ほぼ無料で市場で取引される例が増えた。蓄電池の代替手段として安価な蓄熱発電が注目を集めている。

蓄熱発電は熱を石などにためたり、再発電したりといった昔からある技術を活用。試験プラントの運用などを経て、効率的な設備の設計や運用が可能になり、従来の試験段階から、商用施設ができる段階に移ってきた。先頭を走るのが、アルファベットの研究所から独立した米スタートアップのマルタだ。2021年10月にカナダのNBパワーと同国東部に1ギガ(ギガは10億)ワット時の電力をためる施設を建設すると発表。5万~10万世帯が1日に使う電力に相当する規模で、2024年稼働を目指す。”

再生可能エネルギーの電力でヒートポンプを動かして熱と冷気を作り、熱を溶融塩に、冷機は液体に貯留。熱と冷気の温度差を利用して発電する。新施設は当初、夜間などに10~12時間電力をためる用途を狙う。2021年2月に5千万ドル(約57億円)を調達し、同7月には独シーメンス・エナジーとヒートポンプなどを製造する提携を結んだ。米国でマルタへの期待は高い。”

蓄熱発電に取り組む主な企業

”シーメンス・エナジー子会社で、スペインのシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーが2020年代半ばに、コンクリートの建物内に並べた大量の小石に熱を蓄える施設を建設。熱した空気で水蒸気をつくり、タービンを回して再び発電する。欧州で廃止が進む石炭火力発電所の敷地に建設し、蒸気タービンや発電機を転用。1ギガワット時の電力を1~2週間蓄える。2019年に130メガワット時の試験施設を建設済みで、風力発電などの余剰電力を蓄えている。熱を運ぶ風を制御する板や大量の小石の配置を工夫し、再発電の効率は25%程度。新施設は蒸気の温度を上げ、効率を40%弱に高める。再生可能エネルギー電力が余る時間帯に安く電気を買って蓄え、不足時に販売する考えだ。ドイツは石炭火力の廃止時期を2038年から2030年に前倒しすると木俣。石炭火力の代わりに再生可能エネルギー発電の出力調整の手段として普及を図る。”

シーメンスガメサの施設

”米電力研究所(EPRI)はコンクリートのブロックに熱を蓄える。米電力会社サザン・カンパニーなどと、10メガワット時の試験設備を米国の石炭火力発電所に建設。2022年末までに試運転する予定だ。日本では愛知製鋼と豊田中央研究所(愛知県長久手市)、近江鉱業(滋賀県米原市)が石灰と粘土鉱物の蓄熱材を使う試験設備を2024年ごろに建てる。数メガワット時の電力を蓄える。蓄熱材は20~30年使えるという。2030年までに数十メガワット時の設備を商用化する計画だ。スウェーデンのアゼリオは1辺が2.7~3.7メートルの小型機で先行。アルミニウム合金を使い、165キロワット時の電力をためる。2021年9月に試験生産を始め、同11月までに約30台を受注した。2022年秋に新工場で量産する。“

蓄熱発電の課題は、熱を再び電力に変えるのに一定の時間がかかることだ。将来的には、蓄熱発電で大量の電力を最長で2週間程度蓄えつつ、電力の小刻みな(即時の)調整は蓄電池が補完的に担うことになるだろう。今後は蓄熱設備の大型化でさらにコストを下げ、再発電の効率を上げる取り組みも進みそうだ。”

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