IT/ECの新技術で「捨てない経済」へ

スタートアップ企業が提供するIT/EC技術・サービスを活用し、中古品流通、レンタルや修理による製品寿命の最大化を図り、ファッション産業のサステイナビリティを向上させるトレンドを紹介した記事です。海外の事例ですが、日本市場でも同種のサービスは始まっています。これらの商品流通段階での改善の前に、長く使用できる高品質な製品を必要な量だけ生産するという製造面の課題があるのですが、いったん市場に投入された商品は使い捨てにするのではなく、できるだけ長く、無駄なく使うことが大切ですね。さらに、製品寿命を終えた製品のリサイクルや廃棄方法を考えることも重要です。

2022年2月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

<日本経済新聞社が提携している、スタートアップ企業やそのサービス内容を調査・分析するCBインサイツ(ニューヨーク)のレポートより>

小売り各業界はごみの排出量が非常に多く、環境を汚染していることで知られる。例えば、ファッション業界は毎年9200万トン以上のごみを出しており、世界の食品ロスは計16億トンに上る。消費者は変化を求めつつある。繊維業界の専門家の52%はファッションにおけるサステイナビリティ(持続可能性)への関心の高まりをけん引しているのは消費者だと答えている。これはサプライチェーン(供給網)の透明化、代替素材の活用、中古品の購入などがある。同様に、代替たんぱく質から堆肥化可能な包装容器まで、持続可能な食品プロダクトを求めていると回答した消費者は65%に上る。”

循環型経済への移行は小売りにとって確かに大きな試練だが、大きなチャンスでもある。しかも、移行を容易にする新たなテクノロジーが続々と登場している。循環型経済の柱の一つとして、古くなった製品を捨てるのではなく新たな命を吹き込むことに大きな注目が集まり、テクノロジーの進化がこれを推進している。中古販売やレンタルのプラットフォームがこの動きを主導している。”

”CBインサイツのデータによると、古着経済の規模は2028年には640億ドルに達する見通しだ。この拡大をけん引するのは質の高い製品を主に扱う中古販売市場で、今後3年間で衣料品小売り全体の11倍の速さで成長するとみられている。古着屋は特に目新しくもないが、スタートアップ各社はこうした古着屋がオンラインで生まれ変わるのを支援している。

・中古アパレルサイトの米スレッドアップ(thredUP)

・高級ブランドバッグのフリマサイトを運営する米リバッグ(Rebag)

・中古販売と、会員がアイテムを交換できるサービスを手掛けるリトアニアのビンテッド(Vinted)

・中古ブランド品の委託販売サービスを手掛ける米ザ・リアルリアル(The RealReal)

・循環型経済のプラットフォームで、米リーバイ・ストラウスや女性向け衣料の米アイリーン・フィッシャーなどと   提携している米トローブ(Trove)など。

”中古販売プラットフォームへの関心の高まりを受け、高級ブランドはシンガポールのリフローント(Reflaunt)など中古販売の課題を解決してくれる業者を活用し、独自の中古買い取り経路の構築に資金を投じている。リフローントは消費者がブランドのサイトで直接中古品を販売し、そのブランドの商品券や現金を受け取れる仕組みを築く。高級ブランド品の通販サイト、英ネッタポルテは最近、中古販売システムを構築するためにリフローントと提携した。つまり、買い物客は商品を買ったサイトで、後にその商品を売ることができる。

”中古販売はファッション業界だけに限らない。スウェーデン家具大手イケアグループは2020年、27ヶ国で家具の改修・中古販売プログラムを導入し、廃棄家具と引き換えに商品券を提供した。2021年には、このサービスを米国の33拠点に拡大した。”

洋服や家具のレンタルは購入よりも持続可能な代替手段になる。所有よりも利用を重視してシェア経済を活用し、消費者に高価なデザイナー商品を利用する手段を提供する一方で、その商品の寿命を最大化する。新型コロナウイルス禍でレンタル業界には大きな影響が及んでいる。テレワークの普及で自宅にオフィスを構える消費者が増え、レンタル家具の利用が急拡大している。例えば、定額制の家具レンタルサービス、米ファーニッシュ(Fernish)の2020年5月の自宅用オフィス家具の注文は同年3月比300%増えた。”

洋服のレンタルは家具よりも浮沈が激しい。2020年初めには外出制限によって新たに洋服を買う必要が減り、米レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)など各社の会員数は大幅に減少した。だが、規制が解除されると、利用者はこうしたプラットフォームに戻った。2021年5月のレント・ザ・ランウェイの会員数は前年同月比92%増えた。”

”この分野で勢いを増しているもう一つの企業は、米シアトルに拠点を置くアーモワール(Armoire)だ。同社は毎月定額料金で顧客のためにレンタル衣料を収集する。プロのスタイリストと機械学習のアルゴリズム(計算手法)を併用し、ユーザーの着心地や体形、サイズなどスタイルの好みを考慮してクローゼットを構成する。

ブランドが洋服の寿命を延ばし、ごみの削減を進めるもう一つの手は修繕サービスを提供し、消費者がその洋服を着る頻度を高め、洋服が長持ちするよう促すことだ。環境保護に力を入れているアウトドア衣料・用品大手の米パタゴニアは自社サイトに修理やお手入れ方法を掲載し、自社製品のリサイクル・修理プログラム「ウォーン・ウェア(Worn Wear)」を運営している。”

アイリーン・フィッシャーも同様に、自社の衣類を回収し「リニュー(Renew)」プログラムで中古販売している。状態の良いものは洗ってきれいにし、簡単な修繕が必要な場合には繕う。修繕で対応できないほどダメージの大きい衣類は芸術作品やクッションカバー、壁掛けなど別のアイテムに再生される。

高級ブランドのネット通販を手掛ける英ファーフェッチも高級品のアフターケアを提供する英ザ・レストリー(The Restory)と提携し、修繕サービス「ファーフェッチ・フィクス」を始めた。消費者はファーフェッチのサイトで、自分のバッグやシューズ、革製品をプロに修繕してもらうために集荷を予約できる。”

”一部の高級ブランドは数年間の無料修理サービスを提供している。だが、イタリアのファッションブランド「ブルネロクチネリ」の場合には、長年営んできた修理サービスが最近になってようやく人気を博している。これは消費者の間で購入した服を長持ちさせる意識が高まっていることを示している。

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