ワークマン、ECで宅配全廃!

このHPでも、ワークマンがキャンプ用品に本格参入するにあたって、販売戦略として「ネット注文」かつ「店頭受け取り」限定という方針を打ち出したことを取り上げました。ワークマンはその方向性をさらに強化していくようです。梱包や配達のことを考えると、とてもサステイナブルな取り組みに思えます。

ワークマンがキャンプ用品へ参入>の項を参照

2022年4月26日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

衣料品大手ワークマンは、5年以内に電子商取引(EC)で宅配を全廃し、店頭受け取りのみにする。梱包・発送作業が不要でコストが大幅に下がり、来店によるついで買いも見込める。現状でも送料がかからない店頭受け取りの比率は高く、顧客にも受け入れられると判断した。早く安くの配達競争に背を向け、店舗網を生かした「宅配なきEC」に踏み込む。”

「#ワークマン女子」の店舗

”3月下旬、「#ワークマン女子 東京ソラマチ店」(東京・墨田)を訪れた女性客は、入店するとそのままレジに向かった。店員にスマートフォンを見せると、レジの背後の棚からテントの入った段ボールが出てきた。ワークマンのECで商品を購入すると、受取場所を自宅にするか店舗にするか選べる。店頭受け取りという選択肢は、ユニクロやしまむらといった他の大手衣料品チェーンも導入している。ただ、ワークマンは2027年3月期末までに1段階先へ進む。宅配の全廃だ。ECの商品受け取りを、店頭に一本化する。消費者にとって「店まで行く必要がない」はECの大きな魅力のはず。逆張り戦略にはどんな狙いがあるのか。”

キャンプ用品の都内展示会

”同社は2月、戦略を先取りする形で、約150品目のEC専用商品を「店頭受け取り限定」で発売した。キャンプ用品が中心で、1人用テントは4900円から。土屋哲雄専務は「全国に500店以上あれば店頭受け取りで問題はない。不満の声はほとんどない」と話す。ワークマンは既に約940店あり、全都道府県を網羅している。ワークマンのECでは宅配の場合、原則700円以上の送料がかかる。負担を嫌って店頭受け取りを選ぶ顧客が、現状でも約8割に達している。飲食料品のような「すぐに必要」という商材ではないことも背景にある。”

”年間40~50店舗の出店を続け、手薄な地域を減らす。郊外路面店が中心だが、都心の店舗も今後10年で2倍の100店に増やす。都心部の顧客が仕事帰りなどにECで注文した品を受け取りやすくする。土屋専務によると、EC専用の物流センターを運用していた時期は「宅配のコストは店頭への配送のおよそ10倍だった」。梱包などに人手がかかり、1万円超の高額購入の場合はワークマンが送料も負担する。「アマゾンのように自社物流網を持っているところには勝てない」

宅配のデメリット、店舗受け取りのメリット

店頭受け取りに一本化すれば、EC向けの設備や人員が不要になる。店舗の商品を補充するため、4トントラックが1日1回、1台あたり約10店を巡回している。この荷台の隙間にECの商品を載せればいい。消費者が注文してから遅くとも1週間ほどで店に届く。ECの返品率は5%で、店舗で販売した場合の10倍に達する。「サイズや質感が思っていたのと違う」といったケースが多いためだ。受け取りの際に試着してもらえば行き違いが減る。”

”店頭受け取りと並行して、ECでもう一つの逆張り戦略も進めている。商品の絞り込みだ。2020年のピーク時に3700あったアイテム数を、約3割の1200にした。「店頭にそろっていない商品も選べる」のがECの魅力だが、売れ行きの鈍い商品まで商品説明や動画を作り込むのは採算が合わないと判断した。「ECでコストカットを進めることで、低価格高機能な製品を提供し続けられる。無理を続ければ赤字になり、結果的に消費者にマイナスになる」と加藤健・営業本部EC事業部長は話す。”

”ワークマンでは全店舗の9割以上をフランチャイズチェーン(FC)が占め、その経営が安定することが成長に欠かせない。宅配はワークマン本社の売り上げになるが、店頭受け取りではFCの売り上げになる。店まで足を運んでもらえばついで買いも期待できる。「ECはFC店の利益を最大化する販促的な意味合いが強い」(加藤部長)。

”宅配便の取扱数は年間50億個に迫り、運び手が足りない「宅配クライシス」が深刻化している。迅速な配達を求められる下請け業者から悲鳴も上がるなか、メルカリが数日遅い配達でよければ送料が安い「ゆっくり宅配」を検討するといった動きも出てきた。ワークマンの戦略は充実した店舗網を持つチェーンにしかできないが、新たな選択肢を示している。”

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