号外:ロシアはもう敗れている

今日は6月30日です。2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、今日も戦闘が続いています。今日もロシア、ウクライナ双方で、傷ついている方、亡くなっている方がいるということです。特に侵攻を受けたウクライナでは、子供も老人も区別なく戦禍に晒されています。なぜ、ロシアがウクライナに侵攻しなければならなかったのか、私には理解できませんが、それよりも心配なのは、どうすればこの戦争を終結させられるのかが、まったく見えてこないことです。どちらかの国が力尽きるまで、この戦争は続くというのでしょうか。主義・主張、政治体制の違いがあるにせよ、一刻も早く戦闘を終結させ、双方でこれ以上人々が傷つくことがないようにすることはできないのでしょうか。下記にご紹介するのは、米国の政治学者、イアン・ブレマー氏のコラムからですが、これまでの経緯がわかりやすく分析されています。この後にはどのような結末が待っているのでしょうか。

6月29日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

ロシアはウクライナ、特に東部ドンバス地方で前進し続けている。ゼレンスキー政権を倒して全土を制圧できるほどロシア軍は強くないが、ウクライナ側にロシアの支配地域から軍を追い出す力はないと確信し、侵攻に伴う世界の食料や燃料の高騰が、ウクライナ支援を続ける西側諸国の決意を試すことになるとも認識している。だが長期的に見てロシアは既にこの戦争に負けている。プーチン氏の侵略の判断は、大国の首脳が犯したここ数十年で最大の失敗の一つとして記憶されるだろう。”

プーチン氏はこの侵攻で何を達成したかったのか。侵攻の目的はウクライナの「非ナチ化と非武装化」だと主張する。非ナチ化でロシアより欧州との関係強化を目指すウクライナの政権排除を狙い、非軍事化でウクライナが将来ロシアの支配に対抗する力を奪おうとした。野望はウクライナだけにとどまらなかった。ロシアは大国として扱われなくてはならないと欧米に思い知らせようとし、西側の主要国が一枚岩でないとあらわにしたかった。2014年のクリミア併合時のように、ロシア国内での支持率上昇も狙っていた。”

では実際に何を達成したのか。ロシアは武力とその動機についてウソを重ねて、国境線を引き直そうとする、妄想に満ちた危険な大国であることをさらけ出した。ウクライナ市民が戦いをいとわない理由や、露骨な大規模侵略への西側の反応をプーチン氏が全く理解していないことも示した。自国軍にも数十年に及ぶ打撃を与えた。侵攻開始から100日間のロシア兵の戦死者は、10年に及んだアフガニスタン侵攻での旧ソ連軍の死者数を上回り、戦車などの重火器を大量に失い、砲弾の供給も減った。米国の重要部材の対ロ輸出規制で、補給は一段と悪化するだろう。粗悪な装備で作戦が思うようにいかず、部隊の士気にも大きなダメージを与えた。”

プーチン氏は欧米に冷戦終結以降にはなかった共通の目的意識を持たせ、多くの欧州市民に米国の支援の重要性を認識させ、彼らが西側の価値観を守るためなら犠牲も辞さないと米国民に示した。さらにフィンランドスウェーデンに北大西洋条約機構(NATO)の中にいる方が安全だと思わせて、ロシアとNATOの境界線を2倍に伸ばした。欧州連合(EU)に懐疑的なデンマークでさえ、今や有権者の3分の2がEUとの防衛関係強化に賛成票を投じている。”

プーチン氏は自国経済に制裁を負わせ、それはプーチン氏が権力の座にある限り解除されないだろう。ロシアの製造業には予備部品が長期間不足する事態も引き起こした。迫る国際社会での孤立への国民の不満や、プーチン氏が指揮を誤ったと感じている批判に我が身をさらした。EUにはロシアからのエネルギー輸入の大幅削減もやむなしと思わせ、欧州各国の首脳に防衛費を大幅に増やす必要性も示した。大量のロシア産エネルギーを欧州からアジアへ転じるには、多くの時間と費用がかかるだろう。しかもロシアのエネルギーや農産品の積極的な買い手は減っており、安く売らざるを得ない。”

これら全てと引き換えに、プーチン氏はドンバス地方とクリミアがつながる黒海沿岸地域を制圧できるかもしれない。もちろん、ロシアは完全には孤立しない。米国の方が世界の平和と繁栄への脅威だとの考えは、世界各地にある。安いロシアの農産品やエネルギー、武器を買い続ける政府も少なくないだろう。だがロシアにとって最悪なのは、この自業自得の状況が少なくともプーチン氏が政権にとどまる限り続く点だ。戦争は長期化の可能性があるが、プーチン氏は既に負けているのだ。

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