号外:牛の脱炭素!?

世界で排出される温暖化ガスのうち、4分の1程度が農林水産業由来だといわれています。牛のゲップには温室効果がCO2の25倍といわれるメタンガスが含まれています。牛のゲップが地球温暖化のひとつの要因になっていることをご存知でしたか。近年、日本国内では少なくなった牛の放牧が、自然環境と調和して、温暖化ガスの排出も削減できるという、とても興味深い話題です。

2022年6月14日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”ミルククッキー「札幌農学校」きのとや(札幌市)のグループ会社は、2021年に買った札幌市内も盤渓山近くの山で放牧を9月に始める。将来的には育てた牛から絞る牛乳でスイーツをつくる。脱炭素の機運が高まり、酪農分野でも温暖化ガスの削減を迫られている。菓子ネーカーも注目する放牧酪農を紹介する。”

”放牧酪農では牧場内の牧草地を複数の区画に分けて数日おきに牛を移動し、牧草をまんべんなく食べさせることが多い。草の利用と生育を繰り返すことが狙いだ。日々の搾乳や雪が降る冬は牛舎で飼育する。農林水産省によると、全国で飼育する乳牛は2020年時点で約135万2000頭。放牧牛はそのうち2割の27万3000頭程度だ。北海道の放牧頭数は25万頭前後と9割強を占める。

日高牧場

”きのとやグループのユートピアアグリカルチャー(北海道日高町)が札幌市内の山を買った。山での放牧に先立ち、同社が持つ日高牧場で調べた土壌の炭素量や牧草の窒素量など栄養分のデータを基に、森林や牧草地へのCO2吸収量を予測するための実証実験をしている。放牧酪農は脱炭素にもつながる。トウモロコシなど飼料を増産するための森林伐採を食い止められるほか、飼料輸入にかかるCO2を抑えられる。牛のふん尿は牧草の栄養源となり、育った草が光合成でCO2を吸収する。

”放牧酪農は牛のゲップに含まれる温暖化ガスの影響も緩和できる(*)。牛のゲップには温室効果がCO2の25倍といわれるメタンガスが含まれる。2010年に排出した世界の温暖化ガスのうち、4分の1程度が農林水産業由来だった。農業では家畜のゲップなど消化酵素の働きによるメタン排出が温暖化ガスの4割を占める。

(*)子牛が生まれて搾乳できるまで2年程度かかる。放牧牛は舎飼い牛よりも長生きするため、後継牛を含めた全体の飼育頭数を減らすことができる。

農林水産省の試算では放牧酪農の経費が牛舎で育てる「舎飼い」に比べ、乳牛1頭あたり約18%少ない。自ら牧草を育てる放牧酪農は海外からのエサの輸送コストがかからず、為替や飼料価格の影響を受けにくいからだ。農水省の「食料・農業・農村白書」によると、国内の飼料自給率は25%(2020年度)。酪農は飼料を輸入に頼っている。

放牧と舎飼いのコスト比較

”課題もある。北海道大学の内田義崇准教授は「土壌や牧草などの炭素、窒素などをきちんと管理することが必要だ」と指摘する。農畜産業振興機構(東京・港)は、飼育する牛も多くなりすぎると牧草を再生産できなくなるとみているほか、海外では水質汚染の報告も出ている。”

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