号外:国内最大級のバイオマス発電所が稼働

バイオマス発電は、動植物由来の未利用資源や廃棄物を燃料として発電します。廃棄物の削減効果や、生育する間に光合成でCO2を吸収する植物由来の燃料を使ったカーボンニュートラルな電力を得ることが期待されています。下記の資料は現在利用されている、あるいは利用が検討されているバイオマス燃料を示しています。これらのバイオマス燃料を、自然環境に悪影響を与えることなく、安定的に調達することが課題になります。

期待されるバイオマス燃料

2022年6月15日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

福島県いわき市のバイオマス発電所

福島県いわき市で大型のバイオマス発電所が稼働した。関西電力、発電所保守管理のエイブル(同県大熊町)などが出資する合同会社が運営する。バイオマス燃料だけを燃やす稼働中の発電所では国内最大級で、関電にとっては東北初のバイオマス発電施設となる。エイブルエナジー合同会社(同県広野町)が4月、運転を始めた。同社は2015年2月設立で、関電が50%、エイブルが45%、九電工が5%を出資した。”

発電所があるのは好間(よしま)工業団地(いわき市)。約5万4000平方メートルの広い敷地を確保でき、送電線や輸入で賄う燃料を運び込む港湾へのアクセスの良さなどから立地を決めた。巨大なボイラーで木質ペレット(*)を燃やして蒸気を作り、タービンを動かして発電する。出力は11.2万キロワット。年間発電量は、一般家庭25万世帯分に相当する約7.7億キロワット時を見込む。”

(*)木質ペレット:乾燥した木材を細粉し、圧力をかけて直径6~8mm、長さ5~40mmの円筒形に圧縮成形した木質燃料。原料は、森林の育成過程で生じる間伐材などや、製材工場などから発生する樹皮、のこ屑(プレーナー屑)、端材など、再生可能な資源である木材。

発電所敷地内の木質ペレット倉庫

大量のペレットは北米など海外から安定調達する。発電所敷地内と小名浜港(いわき市)に設けた倉庫でそれぞれ2万トン、4万トンを収容する。発電では1時間当たり55トン、年間44万トンを消費する。発電電力はすべて東北電力グループで送配電事業を手掛ける東北電力ネットワーク(仙台市)に売る。固定価格買い取り制度(FIT)に基づく価格は1キロワット時当たり24円。植物などを燃料にするバイオマス発電はCO2排出量が実質ゼロとみなされる。樹木は伐採後に再生産される過程で大気中のCO2を吸収し、燃焼による排出量と均衡するためだ。”

”エイブルは発電所建設の検討を始めた2012年段階で、燃料の数%にバイオマスを使う石炭火力を計画した。その後、環境影響評価の過程で福島県が「バイオマス比率を高めてほしい」との意見を述べ、最終的にバイオマス燃料100%の発電所にした。福島県は東京電力福島第1原発事故後、原子力に依存しない方針を打ち出し、再生可能エネルギーの推進を復興の柱の1つに位置付けた。2040年をメドに、県内の全エネルギー需要の相当量を再生可能エネルギーで生み出す目標を掲げる。木質以外を含めたバイオマス発電の総出力は、2020年度の25万7500キロワットから2030年度に45万キロワットへの引き上げを計画する。”

”国内の大規模なバイオマス発電所としては、大手のイーレックスとENEOSが新潟県で出力30万キロワットの施設建設を計画し、2026年度の稼働を目指している。”

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