号外:プラスチックリサイクルの実態、需要のない再生プラスチック

ちょっとがっかりしてしまう内容の話題です。(一社)プラスチック循環利用協会の資料にあるように、2020年の日本の廃プラステチック総排出量は822万トンで、有効利用されたものは710万トン、有効利用率(リサイクル率)は86%ということになっています。しかし、有効利用されたもののうち509万トン(有効利用量の72%)は「サーマルリサイクル」です。リサイクルとは資源を循環させることを意味します。日本で言うところのサーマルリサイクルは、海外では「エネルギー回収」や「熱回収」と呼ばれ、リサイクルとはみなされていません。資源循環という意味でのマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルは、有効利用量に対してそれぞれ24%、4%に過ぎないのです。日本では廃プラスチックが分別回収されていることは事実ですが、その再利用にはまだまだ課題が山積しています。

プラスチック循環利用協会資料

2022年6月30日付け日本経済新聞電子版に掲載されたコラムより、

プラスチック資源循環のイメージ

”再生プラスチックやバイオプラスチックの取材をしていて、プラスチック資源循環の輪に亀裂を感じざるを得ない。2022年4月1日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」が施行され、廃プラスチックの回収量の増加が予想されるも、再生プラスチックの需要増加が見込めないからだ。品質が悪い上にコストが高い再生プラスチックを、一体誰が、何に使うのか。”

2019年の日本国内における廃プラの総排出量は850万トンだった。そのうち、およそ85%の726万トンがリサイクルされている。ただし、リサイクルの約7割は、廃プラを焼却して熱エネルギーとして回収する「サーマルリサイクル」であり、原料として再生利用される割合は約3割にとどまる。年々増加する傾向にあるリサイクル率も、サーマルリサイクルの増加の寄与が大きく、再生利用の割合は10年以上横ばいだ。“

再生利用の割合が増えない主な理由は、再生材の用途が限られているためだ。再生利用の方法には、廃プラを寸断・溶融して再生材を得る「マテリアルリサイクル」と、廃プラを分子レベルで分解して化学原料を得る「ケミカルリサイクル」がある。マテリアルリサイクルで得た再生材は、衛生的に食品用途に使えない。劣化が早いため、自動車部品などの耐久性が求められる部本への応用は難しい場合も多い。一方、ケミカルリサイクルで得た再生材は、バージン材と同等の品質で用途の拡大が期待できる。ただし、プラスチックの原料(モノマー)として使えるほどきれいな化学原料を得るには、廃プラを単一の材質ごとに分別する手間がかかる。その上、プラスチックの分解に必要なエネルギーも多くコストも高いため、現状、ケミカルリサイクルの活用は限定的だ。

プラスチック新法の施行によって、環境配慮型設計の製品にインセンティブを与えたり、廃プラ回収に係る規制を緩和したりと、再生プラスチックの供給を促進する仕組みは整いつつある。しかし、再生プラスチックの利用となるとどうか。特に、消費者向け製品での利用を促すインセンティブが要るのではないだろうか。というのも、廃プラの半数が一般家庭から排出されているからだ。消費者の環境意識やモッタイナイ精神だけでは、資源循環の輪は広がらない。消費者が「あえて」再生プラスチックを使いたいと思えるような魅力のある製品や、使った時の報酬が必要だろう。

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