号外:世界を襲う熱波、山火事や洪水被害

気候変動の影響で世界を熱波が襲っています。同時に世界はエネルギー危機にも直面しています。日本でも節電と同時に、適切なエアコン使用で熱中症を予防することが求められています。学校は夏休みに入りますが、新型コロナウイルス感染症の第7波も拡大しています。暑く、厳しい夏が続きます。

2022年7月19日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

河床がひび割れたロワール川

“世界が記録的な熱波に襲われている。英国は7月19日、観測史上最高の40.2度をロンドン郊外のヒースロー空港で記録した。フランスも連日40度を超える暑さとなり、スペインでは山火事が拡大する。日本も6月から異例の高温が続き、電力需給が逼迫した。世界で温暖化ガスの排出は増え続けており、気候変動の影響がさらに広がりかねない。”

英国は社会インフラが高温を想定しておらず、ロンドンの地下鉄には冷房がない路線もある。鉄道会社が不要不急の外出を控えるよう呼び掛けるなど警戒感が高まっている。欧州は未曽有の高温が続く。ロイター通信によるとポルトガルは7月14日に47度を記録。16日、熱波の影響で過去1週間に高齢者を中心に659人が死亡したと発表した。フランスはボルドー近郊が観測史上最高の41.9度に達した。西部ナントは7月18日に42度と、過去最高だった1949年の40.3度を超えた。

世界各国の熱波による被害状況

山火事も深刻だ。仏西部ジロンドでは7月18日までに1万4000ヘクタールが焼けた。消防隊1700人を動員してなお鎮火に至っていない。1万6000人が避難している。スペインでも少なくとも4000ヘクタールが焼失し、7月17日には消防士が死亡した。サンチェス首相は18日、ツイッターで「気候変動は人の生死に関わる。我々はそれを目の当たりにしている」と発信した。世界気象機関(WMO)によると、5月中旬にはインド各地で45~50度を観測した。パキスタンも50度に達し、山岳地帯で氷河湖が決壊した。

”欧米の研究者でつくる世界気象アトリビューション(WWA)は、南アジアで熱波の確率が温暖化のない場合の約30倍に上がっていると分析する。気候変動対策を取らなければ「熱波はさらに頻繁に起きる」と警鐘を鳴らす。日本も例外ではない。日本救急医学会の医師らは6月28日の記者会見で暑さを「災害級」と強調した。群馬県伊勢崎市は25日に6月として国内初の40度以上を観測。7月1日には茨城県内を走る関東鉄道常総線が暑さによるレールのゆがみで運行できなくなった。

東京の8月の平均気温グラフ

”気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、世界の平均気温は産業革命前に比べ既に1.1度上昇した。気象庁のデータでは日本の上昇幅は1.5度になる。IPCCは2021年8月の報告書で、50年に1度の熱波の起こりやすさが4.8倍に、農業や生態系を脅かす干ばつが1.7倍になったと推計した。オックスフォード・エコノミクス社は東南アジアでの高温などが農業に影響を与えていると指摘する。過去の熱波は数ヶ月にわたって食料価格を5~6%上昇させる一因になったという。”

”7月17~19日にベルリンで開いた気候変動に関する閣僚級会合「ペータースベルク気候対話」では途上国への資金支援などを議論した。国連のグテレス事務総長は「人類の半数が洪水・干ばつ・山火事などの危険地帯に住んでいる」と懸念を示した。温暖化ガスの排出量は増え続けている。石炭火力による2021年の世界の発電量は、中国やインドなどの新興国の電力需要の増大に伴い2020年比9%増の10兆422億キロワット時と過去最大になった。気候変動の加速で熱波のリスクは高まる。電力需要が膨らみ、化石燃料への依存が深まる悪循環にも陥りかねない。危機のさなかでも各国が協調して温暖化対策を講じる重要性が高まっている。

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