号外:自衛隊の災害派遣を考える

ロシアによるウクライナ侵攻及びそれに関連する食糧危機やエネルギー危機、台湾海峡での中国と台湾・アメリカの緊張関係の高まり、北朝鮮が繰り返すミサイル発射と核実験の懸念。このところ日本の安全保障に影響を与える事案が世界で、日本の周辺で連続して発生しています。これを受けて政府は日本の防衛力を抜本的に強化するための施策を検討しています。日本の安全保障は、日米安全保障条約により米国と連携することを基本としています。しかしこれは、「米国が日本を守ってくれる」ということを単純に意味しているわけではありません。有事に際しては、まずは日本が自国を守るために行動しなければなりません。日本の自助努力があってこそ、米国との連携が可能になります。日本の国土と国民の安全を担っているのが自衛隊です。自衛隊の在り方については、我々国民がしっかり理解し、必要な議論を深めていかねばならないと思います。

2022年11月16日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

自衛隊は「主たる任務」と定める国防に加えて災害派遣を担ってきた。2018、19両年度は自衛官の災害派遣が連続して述べ100万人を超えた。自衛官23万人で平均すると1人当たり3ヶ月に1回のペースに当たる。世論が自衛隊に期待する役割としても災害対応が最も多い。大規模災害時には被災者の捜索・救助や給水、物資の輸送などに自衛隊の力が欠かせない。”

“防衛省によると1977年度から2021年度までのうち4つの年度で派遣規模が述べ100万人を上回った。最初は阪神大震災があった1994年度で残りの3回はこの10年ほどに集中する。気候変動などを背景に機会が増えているとみる。東日本大震災の影響で2011年度は1000万人超に達した。西日本豪雨があった2018年度、台風19号などの被害がでた2019年度はともに100万人台だった。熊本地震が起きた2016年度も85万人ほどが出動した。”

“自然災害にとどまらず2020年度には新型コロナウイルスの感染拡大への対処にあたった。自治体の支援や空港の水際対策などでコロナ関連の派遣は1年間で97件にのぼった。離島などから救急搬送の必要がある患者を運ぶ「救急輸送」も含め、災害派遣件数は2012~2021年度の10年間で年平均500件程度になる。1日1件を超すペースといえる。”

“世論は好意的に受け止めている。内閣府の2018年の世論調査で「自衛隊に期待する役割」を複数回答で聞くと、「災害派遣」が79.2%で最多だった。日本経済新聞社が2021年11~12月に実施した郵送世論調査で、63%が自衛隊を信頼できると答えた。「信頼できない」はわずか6%だった。入隊を志望した理由に被災地での自衛隊の活躍を挙げる自衛官もいる。”

自衛隊の任務

自衛隊法は3条で日本の防衛が自衛隊の「主たる任務」と定める。災害派遣は国連平和維持活動(PKO)や重要影響事態への対応などとともに「従たる任務」と位置付けるが、いまや一大任務になっている。防衛省は2022年8月に初めて「気候変動対処戦略」を策定した。災害派遣によって訓練日数が足りなくなる恐れがあると指摘した。気候変動を安全保障上の問題としてとらえ、基地や防衛相部品など部隊運用の強靭性を高めるとうたった。”

“2020年1月に当時の河野太郎防衛相は「大規模で長期間の災害派遣活動が著しく増えている」と語った。前年の台風15号と19号などの対処で「陸上自衛隊は部隊の連弩の維持・向上に必要な訓練全体の1割を中止・縮小した」と説明した。岸田文雄首相は8月10日、浜田靖一防衛省に防衛力強化に向けた7つの指示(①スタンド・オフ防衛能力②総合ミサイル防空能力③無人アセット防衛能力④領域横断作戦能力⑤指揮統制・情報関連機能⑥機動展開能力⑦持続性・強靱(きょうじん)性)を出した。相次ぐ自然災害への対応はこの中に入っていないものの「必要に応じて迅速に災害派遣する」と付け加えた。国民の多数が期待する役割についてどう体制を整えていくのかも自衛隊を巡る論点になる。”

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