号外:豪雪、温暖化でむしろ増加

地球環境は大気、海洋、陸域で発生する様々な気象現象、自然現象、人間や動物の活動などのバランスで成り立っています。温暖化が進めば冬は暖かくなり、降雪は減少すると言えるほど簡単なことではないようです。人間の活動が地球環境に悪影響を及ぼしていることは、今では世界の人々の共通認識になってきました。しかし複雑な地球環境システムを人間が完全に理解しているわけではありませんし、ましてそれをコントロールできるわけでもありません。せめて悪影響を及ぼす懸念のあることは極力控えるといった、人間の自制が大切なのだと思います。

2022年11月19日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“温暖化なんてウソなんじゃないか・・・。冬に大雪が積もる荒天が続くと決まってこんな投稿をSNSで見る。地球全体の気温が高まっているのなら、冬も温暖になっていなければおかしいでしょうと続く。だが専門家はかぶりを振る。それどころか、大雪を伴う冬の嵐は増えていくと指摘する。

爆弾低気圧

“冬の嵐の犯人の一人は「爆弾低気圧」だ。気圧が24時間で24ヘクトパスカル以上下がり、北日本を中心に大雪や暴風をもたらす。日本列島の南を通れば、東京や名古屋など雪に慣れていない地域を襲う。2014年2月の豪雪災害がそうだった。爆弾低気圧が「日本の東の北太平洋で急増中」とする論文が2022年2月に出た。温暖化が進んでいるにもかかわらず、逆説的な結論が注目された。そこで日本経済新聞は、研究チームの京都大学や東京大学の協力を得て、日本に災害をもたらす冬季(12月~翌年2月)の爆弾低気圧の盛衰を60年間にわたって可視化した。1961~90年に比べて91~2020年の方が、日本に近い太平洋で低気圧が急発達をして爆弾低気圧の基準を満たした回数が20%多かった。”

爆弾低気圧が発生するしくみ

爆弾低気圧は、地上にある温帯低気圧と上空の気圧の谷が結びついたときに発生しやすい。北からの寒気と南からの暖気のぶつかり合いが弱い夏にはほとんどできず、初冬から春にかけて太平洋などで発達する。温暖化で暖かくなれば、大雪と暴風を伴う冬の嵐も減るように思われるが、南の海上の高温多湿化が爆弾低気圧発生の要因になっているという。発達する低気圧にとって、暖かい海面はエネルギーの源だ。南の海上とは、爆弾低気圧が「爆弾」になるずっと前、温帯低気圧として産声を上げることが多い東シナ海だ。この「ゆりかご」は過去100年でセ氏1度以上熱くなっているという。気象庁のデータによると、爆弾低気圧が発生しやすい冬季の東シナ海南部の海面水温は、1961~90年と91~2020年期間で0.7度暖まった。また、日本の太平洋側の海面水温の高まりも無関係ではないという。”

暖かい海面は水蒸気を増やし、上昇気流も生む。上昇気流によって冷やされた水蒸気は水滴(雲)に姿を変えるときに熱を放出する。その熱がさらに上昇気流を強めるという繰り返しで、もくもくと積乱雲が育つ。台風の発達とも似ている。台風は積乱雲が種になる。無数の種が植わる暖かい南海で、地球の自転という肥料を得て回転を始め、巨大な目を持つ大輪の花を咲かせる。成長過程で通る海が暖かいほど強く大きく育つ。台風であれ爆弾低気圧であれ、低気圧の生殺与奪の権は海面水温が握っている。

東シナ海の海面水温と爆弾低気圧の発生回数

温暖化で全体として降雪量は減少傾向であるとしながらも、温暖化の影響を受けても北日本や東日本の山沿いは十分寒い。気温が上がると、空気中の水蒸気が増えてかえって雪が増える可能性があることも指摘されている。爆弾低気圧が増えれば、大雪の回数も相対的に増えそうだという。

「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」。2021年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は第6次評価報告書で原因が人為だと初めて明記した。海面水温が高まる海洋熱波が「拡大する」とも指摘した。爆弾低気圧が増えると、強風や高波に加え、特に山沿いの豪雪など極端な現象の頻度が増す懸念がある。2014年2月の豪雪では、山梨県などで住宅の全壊が相次いだ。国は2019年に建築基準法を改正し、雪の重さに建物が耐えるように基準を見直したが、さらに見直しを迫られる可能性もある。”

地球は暖まり続けている。それと同時に列島を襲う冬の嵐が増えていることも現実だ。「地球X温暖化=常夏」という単純な方程式では理解できない現象が今冬も列島を襲うだろう。”

Follow me!