中国のPLA、革新素材になるか

PLA(ポリ乳酸)は植物由来で、カーボンニュートラルな生分解性樹脂です。主な用途はプラスティック成形品と繊維製品です。繊維産業は環境負荷が高い産業と言われていますが、その環境負荷を低減するためには素材の革新が必要です。地球温暖化ガスの排出を削減するために、色々な業種でリサイクル、脱プラスティックが求められています。繊維産業での脱プラスティックは、既存の石油由来合成繊維の使用を控えるということになりますが、そのためには代替素材が必要です。世界の人口増加(昨年80億人に達したようです)に対応するための食糧増産との関係で、綿やウールといった天然繊維を大幅に増産することは不可能です。食糧生産と競合しない形で、PLAのような植物由来繊維を利用することには大きな可能性があります。市場に定着して一定量の継続生産が可能になれば、使用後のPLA繊維製品を回収してリサイクルすることもできます(回収・分別の課題はありますが、技術的には可能です)。様々な理由でリサイクルが困難な場合には、焼却するのではなく、生分解処理することで環境負荷を低減することもできます。PLAは決して新しい素材ではありませんが、これまで普及の妨げになっていたボトルネックを解消し、市場に広がっていくことが期待されます。

2022年12月23日付け繊維ニュースに掲載された記事より、

中国のPLA(ポリ乳酸)繊維市場が拡大の気配を見せている。安徽豊原グループ(以下、豊原)が今年開発した農業廃棄物を使った生産技術により、普及を妨げていたボトルネックが解消されそうだ。川中・川下企業の開発も進んでいる。中国発の技術革新が、世界の繊維市場を変える可能性もある。”

PLA(ポリ乳酸)は、小麦やトウモロコシなどのでんぷんを原料とする植物由来の生分解性プラスティックだ。生産工程の環境負荷も低く、温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」やサステイナビリティが世界的な潮流となる中、近年注目される素材となっている。”

主な用途はプラスティック製品と繊維品だ。中国ではこの1、2年、スーパーのレジ袋や、飲食店のストローなどでの採用が一気に進んだ。PLAの世界三大メーカーは、米国のネイチャーワークスと中国の豊原グループ、オランダのトタル・コーピオンPLAで、それぞれの年産規模は15万トン、10万トン、7万5千トン。豊原は今年(2022年)、年産30万トンを生産できる工場を完成させており、2023年の本格稼働後は、同社が世界トップになる可能性がある。”

PLAを原料とする繊維は、肌との親和性が綿やポリエステル繊維よりも高いといわれている。素材そのものが抗菌や防ダニ、何年などの機能性を持つ。そのため、「インナーやホームテキスタイルなど、肌に直接触れるアイテムに適している」(豊原幹部)。欧米や日本では、過去に何度か市場拡大の兆しを見せたが、ボトルネックがあり、普及しなかった。その一つが、PLAがトウモロコシなどのでんぷんを原料とすることだ。飢えなどの食糧問題が解決されていない中で、食糧を繊維品に使うのは不適切という考えが存在した。メーカーが限られ、「供給がタイトで価格が高止まりしていた」(日系商社関係者)ことも普及の妨げになっていたようだ。”

“これらの問題を解消しそうなのが、豊原が開発した小麦やトウモロコシのわらなどの農業廃棄物から、PLAを生産する技術だ。同社はこの技術を今年(2022年)8月に発表し、生産を始めた。同社生物技術の付松総経理は「(PLAの原料を)今後、農業廃棄物に徐々に切り替えていく」と説明する。”

“豊原の動きに合わせるように、中国でPLA繊維の川中・川下企業が投資を加速している。東部湾<揚州>生物新材料は昨年6月、江蘇州揚州で年産能力8万トンのPLA繊維工場を着工した。2019年に新設された同社は、「世界唯一」のPLA繊維量産メーカーを目指している。特殊加工糸を生産する蘇州蕭然新材料は、福建省で年産5万トンのPLA原糸を生産する工場を建設中だ。2024年の稼働を予定する。紹興邁宝科技(BMC)は、PLA繊維と天然繊維の混紡糸などを、無機塩とアルカリ剤を必要としない独自の染色技術で染める商品を前面に打ち出す。”

“こうした川中・川下企業の技術も向上しつつある。PLA繊維は高温に弱く、染色加工の難度が高いとされてきたが、現在は「黒などの濃色以外は通常の素材と同じように加工できる」(豊原幹部)と言う。染色が難しい場合は、原着糸を使って対応できる。豊原の技術革新を機に、中国発のPLA繊維が世界に広がっていく可能性がある。

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