号外:南極のオゾンホール、2066年ごろまでに消失へ

地球環境についての話題は、大抵の場合は温暖化が進んで異常気象が発生したとか、温暖化ガス排出量の削減が予定通りに進んでいないとか、何らかのネガティブな要素を含んだものが多いのですが、今回は久しぶりに良い話題です。世界が協力した対策の効果で、南極のオゾンホールが消失に向かっています。着実に対策を継続すれば、その効果が現れます。もちろん地球環境を相手にした取り組みですから、効果が現れるまでに時間がかかるかもしれません。だからこそ、手遅れになる前に、それぞれの課題について、しっかりと対策を講じていかなければいけないと思います。

2023年1月16日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

南極上空のオゾンホール(2022年10月)

国連環境計画(UNEP)をはじめとする5団体は共同で、南極上空のオゾン層が修復されており、2066年ごろまでに、破壊が確認される前の1980年の水準に回復するとの予測を発表した。オゾン層が極端に薄くなるオゾンホールが消失するという意味だとみられる。オゾン層を破壊する化学物質を規制する世界規模での取り組みが奏功した格好で、地球温暖化対策にもよい影響を与えそうだ。”

オゾンは3つの酸素原子で構成される酸素の同位体だ。地球全体を覆い、太陽からの有害な紫外線を遮る効果がある。オゾン層が破壊され、薄くなると大量の紫外線が地球に直接届き、皮膚がんや白内障などを引きおこすとみられている。植物の成長を阻害するとの見方もある。オゾン層の破壊が広く意識されるようになったのは1970年代の半ばだ。冷蔵庫の冷媒やスプレー缶の噴射剤に使われるフロンがオゾン層を破壊すると判明した。オゾン層は気温が極端に低い極地で損なわれやすく、1980年代には南極上空でオゾンホールが確認されるようになった。

オゾン層と温暖化を巡る主な出来事

“オゾンホールの拡大を防ぎ、回復を目指すため、1989年には特定フロンをはじめとするオゾン層破壊物質の生産や消費を禁じる国際条約「モントリオール議定書」が発効した。議定書にはその後、温暖化ガスに含まれる代替フロンが追加され、規制は強化されてきた。UNEPなどが1月上旬にまとめた報告書は、こうした国際的な規制がオゾン層の破壊を食い止め、回復に貢献したと評価した。これまでのような対策が続けられれば、南極上空のオゾン層は2066年ごろまでに1980年のレベルに戻ると予想した。オゾン層は北極上空で2045年ごろまでに、他の地域では2040年ごろまでに1980年の水準に回復するとも指摘した。

フロンなどはCO2と同じく温暖化ガスのカテゴリーに入る。このため、オゾン層を保護する試みを継続すれば、地球温暖化の抑制にもつながると報告書は記した。報告書の作成に加わった国連の専門機関の一つ、世界気象機関(WMO)のターラス事務局長は、オゾン層を守る国際的な取り組みの成功が気候変動対策を進めるうえで格好の事例になると主張した。ターラス氏は「私たちはオゾン層を破壊する化学物質を段階的に削減できている。この成功は化石燃料への依存から脱却し、地球の気温上昇を抑えるために何ができるのか、何をなすべきなのかを教えてくれる」と説明した。”

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