号外:新ペットボトル回収ボックスで「脱ゴミ箱」

飲み物の自動販売機の横などにペットボトルや空き缶などの回収ボックスが置いてあるのを良く見かけます。あれはリサイクルするための回収ボックスであり、決してゴミ箱ではありません。ところが実際には異物混入(ゴミの投入)が頻発していて、リサイクルのための回収に支障をきたしています。この状況を改善するために、新しいリサイクルボックスが開発されたという話題です。

2023年2月1日付け日経クロストレンド電子版に掲載された記事より、

“街なかの自動販売機横にある樹脂製ボックスの設置目的をご存じだろうか。正式名称を「自動販売機横リサイクルボックス」といい、飲み終えた飲料の瓶や缶、ペットボトルなどの空容器を、リサイクルを目的に回収するためのもの。街のゴミ箱ではない。清涼飲料業界の業界団体である全国清涼飲料連合会(以下、全清飲)は既存のリサイクルボックス(以下、既存型RB)の「街のゴミ箱化」に頭を悩ませていた。そこで、自動販売機業界が組織する日本自動販売協会と新機能リサイクルボックス(以下、新機能RB)を共同開発。投入口を下向きにし、色も「脱ゴミ箱カラー」のオレンジに変えた。2022年秋から順次、繁華街などの異物の混入が多い場所を優先して置き換えを進めている。”

新旧のリサイクルボックス

“2022年10月からは、新たに環境省と日本自動販売協会が、自動販売機のオペレーター事業者、東京都調布市、川崎市と連携し、プラスティックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスティック新法)に対応した、リサイクルボックスへの効果的な異物混入防止に関する実証実験も、新機能RBを活用しながら行っている。2020年に行った意識調査では、42%が既存RBはゴミ箱だと思い、53%はゴミがあったらリサイクルボックスに捨てると回答した。これは業界にとっては衝撃的な結果で、早急な対策が必要として、新機能RBの開発に乗り出した。既存型RBは各メーカーが独自の考え方で、色もグレーやブルーといった自販機より目立たない色が好まれてきた。業界統一仕様は初の試みで、ボックスの色ひとつとってもさまざまな意見が出され、最終的には「脱ゴミ箱カラー」を目指し、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」のテーマカラーでもあるオレンジを採用することに決定した。”

“前述の意識調査を受け、速やかに開発グループを立ち上げ、試作機を作成しながら実証実験を重ねた。特に混入率が高い都市部の例として東京都渋谷区を皮切りに、中核都市の浜松市や地方都市の愛知県岡崎市でも実施。2021年10月から約1ヶ月間実証事件を実施した広島市では、42%あった異物が25%まで低減した。さらに2022年には、追加の実証実験を神奈川県南足柄市で実施した。人口5万人未満の地方都市との比較を見るためだ。いずれのケースも低減効果が確認されたという。その間、月1度程度のミーティングを開き、形状や色などをアップデートしていった。”

新機能RBの特徴である下向きの投入口は、早い段階でメーカー各社の意見が一致した。投入口を左側に付けたのは、あえてアクションを増やし気づきを促すのが狙いだ。右利きの人には手間な構造だが、右側の啓発ステッカーに目を留めてもらうための工夫だ。試作機は、実証実験でボックス上部に空容器を置かれるなどの問題点が見えたため、傾斜角度を変えた。既存の直径90ミリメートルの口径ではプラスティックカップが入るため、プロトタイプで直径85ミリメートルに落としたものの、まだプラスティックカップの混入が見られた。”

新機能RBの下向き投入口

特に多い異物は、テークアウト用プラスティックカップや弁当容器類だ。リサイクルを考えるとできる限り効率よく、きれいな状態で回収したい。しかし実際はプラカップが投入口をふさいで空容器が入れられなかったり、飲み残しが空容器を汚染したりしてリサイクル資源としての価値を下げてしまっていた。企業や事務所内などの自販機横に置かれたリサイクルボックスは、啓発が行き届き、異物の混入はほぼ見られない。そのような場所には既存型RBの方が適している。サステイナビリティの観点や使い勝手を考慮し、既存型RBも併用していく予定だ。

2021年4月には、全清飲は2030年までにペットボトルの水平リサイクルを50%にする宣言を出した。この目標達成のためにも、効率よくきれいな状態でリサイクルボックスから回収したいところだ。1997年に容器包装リサイクル法が施行されて以降、回収されたペットボトルは入札でリサイクル業者が引き取ってきた。この入札にはトレーなどの容器や繊維メーカーも参加しており、必ずしも清涼飲料メーカーが引き取るとは限らない。また家庭から出されるペットボトルは、きれいな状態が保たれ回収品質が高い。一方で自販機横に代表される事業施設などからの事業系回収によるペットボトルは、残念ながら回収品質が高くないため、処理業者が有償で処分(熱回収ないしは廃棄)している。全清飲としては、効率と品質を高めた回収で、事業系回収においても水平リサイクル等の資源価値を高めたいとしている。

本来の目的通り回収されれば再び資源となるはずのものが、状態が悪いために処分されてしまうのはあまりにももったいない。昨今、街なかからゴミ箱が次々と姿を消すなかで、身近なリサイクルボックスがゴミ箱の代わりに使われるという側面もあり、一足飛びの改善は難しいかもしれない。しかしながら、業界が一丸となって初めて取り組んだ新機能RBは、脱ゴミ箱化へ本腰を入れた第一歩だ。自動販売機横に何気なく置かれているリサイクルボックスも、活用次第で資源循環の担い手になれるはずだ。

Follow me!