売り切りから循環型へ、メーカー自ら中古販売

いったん市場に投入された製品は、その製品寿命を終えるまで使い切ることがサステイナビリティの基本です。購入しても、何らかの理由で自分だけでは使い切ることができない場合は、リユース(他の人に使ってもらう)することを考えましょう。現在ではリユースするための仕組みが色々あります。また、メーカー自身が中古品の2次流通に取り組む例も見られるようになってきました。私たち全員が、SDGsの「つくる責任、使う責任」の当事者です。

2023年3月3日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

セイコーの中古品販売

メーカーが自社商品の中古販売に乗り出している。買い取った中古品を修理したり、真贋(しんがん)保証したりして再販売する。かばんブランド「コーチ」や時計のセイコーグループが相次ぎ参入。成長する中古品市場に踏み込み、ビジネスモデルを売り切りから循環型に転換する狙いがある。”

“「コーチ」などを手がける米タペストリーは1月、自社の中古品を回収し、修繕して再販売する「COACH (Re) Loved(コーチ リラブド)」を始めた。顧客が持ち込むかばんを査定して引き取る。修繕して自社サイトで再販売するほか、切り出した皮素材をコースターなどの材料にも振り向ける。中古品を持ち込んだ顧客は、新品を購入する際に査定金額分の割引を受けられる。「環境への取り組みに敏感なZ世代など若い世代に訴求したい」(同社)。引き取り店舗は当初、銀座店など3店舗にとどまったが、足元では17店舗まで拡大した。”

“オンワードホールディングスは、中核子会社オンワード樫山の古着を回収し、修繕後に再販売する取り組みを始めると発表した。古着1点あたり一律で500円相当のポイントを付与する。生地を染め直すなどして作り直した「アップサイクル品」として、今秋にも販売を始める。”

オンワードのアップサイクル

“専門メディア「リサイクル通信」によると、日本のリユース市場規模は2021年に2兆6988億円と、10年前の2.1倍に膨らんだ。2025年には3兆5000億円規模となる見通しだ。足元の物価上昇も新品から中古へのシフトを加速させており、メーカーの参入を促している。”

“セイコーグループも東京・銀座の和光本店で中古時計の再販売を始めた。プレミアが付いた自社製品を手入れして証明書を付け、ブランド価値を損なわない価格水準で販売する。例えば、主力ブランド「グランドセイコー」の初号機モデルには200万円以上の値段を付けた例もある。同店では、「セイコーのウォッチの歴史を伝える上で再販売の価値は高い」と話している。”

“「メルカリ」などの普及で若い世代に広がったC to C(消費者間取引)を活用する取り組みもある。中国発のシーインは2022年10月、米国で「シーイン・エクスチェンジ」を始めた。消費者同士でシーインの中古服を売買できる。ファストファッションは環境負荷の観点から批判の的になりやすい。欧州などで注目が集まるサーキュラーエコノミー(循環型経済)を打ち出す思惑がある。

従来、メーカーは新品の売れ行きを妨げかねないと中古品販売に及び腰だった。ただ市場の成長力は無視できないうえ、放置すれば偽物が出回るリスクもある。近年は環境対応を打ち出せないメーカーへの視線も厳しい。売り切り型から脱却し、販売後も顧客と接点を持てる利点もある。

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