号外:成層圏で「突然昇温」、寒さ戻る可能性も

成層圏の「突然昇温」という現象についてはまったく知りませんでしたが、下記の情報に触れて、改めて地球の大気はつながっているのだと再認識しました。大気の動きに関係して、各地の気候も変化します。この非常に複雑で微妙なバランスが、人間の活動の結果として不安定化することになれば、気候変動リスクを高めることになるのだと思います。

2023年3月8日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

対流圏と成層圏の大気の動き

日本列島は一気に春めいた陽気となり、今週は日中の最高気温が20度を超えるところも多くなりそうだ。しばらくの間、高温傾向は続く公算が大きい。ただ、成層圏で発生した「突然昇温」という現象が、これからの天候に影響を及ぼす可能性がある。冬だとアジア東部から日本や北米に強い寒波が南下するきっかけとなる場合もある。今のところ寒くなる兆しはないが、事態の急変がないか世界の専門家が注視している。”

“地球を覆う大気は高度によって異なる特徴をもち、地表から高度十数キロメートルまでを対流圏、その上の高度約50キロメートルまでを成層圏とよぶ。対流圏では地形の影響を受けて大気の流れが複雑で、気圧の谷や尾根に対応して高気圧や低気圧が発生し、雲ができて雨や雪が降る。成層圏では冬は北極付近に巨大な「極渦」ができ、その周囲を取り囲むように西から東へ強風が吹くなど、一見単純な流れになっている。”

大気はつながっているので、対流圏で大きな変化が発生するとしばらくして成層圏に伝わり、極渦の位置や状態を変える。その影響は再び対流圏に伝わることが多い。成層圏の変異の中でも代表的なのが、北半球高緯度の上空で気温が数日間に50~60度も急上昇することがある成層圏突然昇温だ。1月下旬に小規模な昇温が起きたもののいったん収まり、2月に入ってから再び昇温が発生した。2度目の昇温は大きく、気象庁などのまとめでは、北極上空約20キロメートルの気温は2月上旬に氷点下75度程度だったのが、中・下旬には同約30度に急上昇した。大規模な突然昇温といえる状況で、日本などの天候に影響してもおかしくないという。”

“冬に突然昇温が起きると、北極付近上空の極渦が壊れ、高緯度地方や中緯度地方に一部が南下することがある。これに対応して対流圏で偏西風の蛇行が大きくなり、南側に蛇行した領域が強い寒波に襲われる。地形的な影響もあり、寒気の南下場所は北米や日本付近になる場合が多い。米気象情報会社の中には、今回の突然昇温の影響も考慮し、米中西部から東部にかけて寒い時期があると予想しているところもある。”

“ただ、実際にどこが寒くなるのかの予想は難しい。蛇行の位置やパターンが少し変わるだけで、寒気ではなく南からの強い暖気が流れ込みやすくなることもあり得る。現状では、日本を含むアジア東部で寒気が大きく南下する傾向にはないが、ロシアの一部などでは気温が下がっている。日本付近は暖気が北上する領域に入っており、このまま暖気が強まる可能性もある。国内外の気象機関や気象会社の週~月単位の予報をみると、来週以降は異常な暖かさは収まりそうだ。そこからさらに気温が下がるかどうかは、もう少し状況を見極める必要がある。”

突然昇温:北半球高緯度の上空の成層圏で、気温が急上昇する現象。地表近くの対流圏を吹く偏西風が大きく蛇行し、大気の流れが停滞する「ブロッキング」現象が起きた時などに、蛇行の波が上空に伝わって発生する。成層圏の風の流れを逆転させ、冷たい空気を伴う極渦を壊す。その影響は数週間で対流圏に戻り、極端な気象をもたらすことが多い。

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