愛媛発「今治のホコリ」が大ヒット!②
「今治のホコリ(着火剤)」の話題の続きです。独自性のあるアイディアであっても、それをどのようなコンセプト、マーケティング戦略で商品化するのかは大切なポイントです。従来廃棄していたものを有効活用すること(今治のホコリ)を基本に、環境に配慮した製品というコンセプトを打ち出し、詰め替え用商品などをラインナップに加えることで、ファン層を広げることに成功しています。
2023年3月13日付け日経クロストレンドに掲載された記事より、
“今治のホコリは1個40g入り。工場で日々、発生する5色程度の綿ぼこりのうち、2~3色を女性社員の「各自のセンス」で取り合わせ、手作業で詰めるため、1つとして同じ商品はない。彼女たちの発案で始めたクリスマス用、バレンタイン用などの期間限定商品も好評を博した。さらに県内のコーヒー専門店の依頼を受け、「カフェオレカラー」の特注品も製作。臨機応変に小ロット生産できる利点を生かし、今後もこうしたコラボには積極的に応じていきたいという。”
“現在は、排出される綿ぼこりのうち、7割ほどを今治のホコリとして商品化できているという。ただ、廃棄物を有効利用したサステイナブルな商品でありながら、プラスティック素材の容器を使うことに対しては、「企画段階から社内でも異論があった」と同氏。発売後、消費者からも同様の意見が寄せられたため、2023年1月から紙袋入りの詰め替え用商品も販売を開始。「プラ容器はプレゼント用、紙袋入りは自分用という2つのニーズを掘り起こし、リピート買いにもつなげられた」(同氏)。”
“現在、西染工が使う染色機は、乾燥後フィルターについた綿ぼこりをその都度、人の手で除去する仕組み。「このタイプだからこそ、様々な色の綿ぼこりを色ごとに分けて回収できる」(同)という。それに対し、近隣の染工場の多くが採用するのは、綿ぼこりを集塵機で一括除去するシステムを搭載した乾燥機で、色別にほこりを集めることは不可能。そのため同氏は、「類似品が出てくる恐れは今治においては低い」と見ている。一方、同タイプの染色機を使用している和歌山県や岡山県など他の地方から、「ほこりを送るので、これも商品化してもらえないか」などと、問合せが来ることが増えているという。将来的には他の地方とのコラボ商品の展開なども考えられそうだ。”
“今治のホコリは、同商品の発売と同時に立ち上げたオリジナルアウトドアブランド「マジックアワー」の第1弾商品でもある。顧客層を対個人にも広めるため、同社は10年前からオリジナル商品を単発的に企画販売してきたが、「ブランドコンセプトに基づかない”思いつき“の商品が多く、ファンの共感を生むまでには至っていなかった」(同)。「ブランドの世界観を明確にし、それに沿った商品展開を行う必要性を感じた」という同氏は、「地球環境にやさしい商品」をマジックアワーのコンセプトに据え、製造工程の簡略化によって、製造時のエネルギー消費を大幅に削減した綿100%のブランケットなども投入。今治のホコリが「広告塔」になることで、アウトドア好きの間でブランドの認知度が上がり、1万6500円(税込み)のブランケットも好調な売れ行きを示すなど、「ブランディングの効果を大いに実感している」(同)。県内の鉄工所などとコラボし、より高価格帯なアイテムも年内をめどに投入したいと意欲を示す。”
“眠っていた資源に対し、時流に合った価値づけを行い、マーケティング戦略にのっとって販売すれば、後発組でも活路は開ける。地方の中小企業が、西染工業の事例から学べることは多い。”