号外:出光興産、苫小牧でグリーン水素を使った合成燃料生産へ
EUは温暖化ガス排出をゼロとみなす合成燃料の利用に限り、2035年以降もエンジン車の新車販売を容認しました。ところで、合成燃料というのはどのようなものなのでしょうか。私の年代の者にとって、自家用車といえばエンジン+ガソリンが基本なのですが、世の中は温暖化ガス排出削減のために電気自動車(EV)への切り替えが急ピッチで進んでいます。個人的にはエンジンを使用する選択肢が残ることは好ましく思えるのですが、みなさんはいかがでしょうか。
2023年3月27日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“出光興産は北海道製油所(北海道苫小牧市)で製造時にCO2を出さないグリーン水素を使った合成燃料の実用化を目指す。2030年までに製油所などで排出するCO2とグリーン水素を合成した液体燃料をつくる。原油に比べ硫黄分や重金属分が少なく、エネルギー密度がガソリンや軽油などと同程度なのが特徴だ。グリーン水素は水を電気分解する過程などで再生可能エネルギーを使ってつくる。合成燃料はそのグリーン水素と製油所や工場で排出するCO2を使った炭化水素化合物の集合体で「人工的な原油」と呼ばれる。常温常圧の液体で、水素などほかの新燃料に比べても長期備蓄できる利点がある。”
“エネルギー密度が高く、ガソリンや航空燃料(SAF)と代替できる。自動車の燃料や暖房用の灯油といった燃料としても使える。海外では独ポルシェが合成燃料を開発。ドイツ、フランス、イタリアは関心が強い。国内ではまだ実用化に至っておらず、新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)のプロジェクトに採択され、ENEOSが実験に取り組んでいる。北海道製油所で生産した合成燃料も、従来の石油と同じようにガソリンスタンドなどへの供給を目指す。同製油所では年間約800万キロリットルの原油処理をしているが、その一部を合成燃料で置き換える。”
“2022年12月、敷地内で風況観測塔の運用を始めた。風力発電設備を設置し、その電力を使って水素をつくることも視野に入れる。水素調達は自社に限らない。グリーン水素のサプライチェーン構築事業を展開している苫小牧市は他地域より有利とみる。2030年度までにCO2を回収・貯蔵、利活用する事業を立ち上げることも視野に、北海道電力や石油資源開発(JAPEX)と調査を進めるという。構内を走行する超小型EV(電気自動車)も導入するなどCO2排出量ゼロを目指す取り組みも加速させた。”
“北海道製油所は日本最北端の製油所だ。1973年に北海道、東北、北陸などにエネルギーを供給する基地として操業を始めた。寒冷地帯では暖房用の灯油や軽油を多く必要とするため、重油を灯油や軽油に変える分解装置も備えている。製品の約8割が道内向けだ。出光興産は2023~25年度までの中期経営計画で2030年までに各製油所で次世代燃料の実用化を目指すと打ち出した。北海道製油所では合成燃料、千葉事業所(千葉県市原市)ではSAFやバイオディーゼルの製造、徳山事業所(山口県周南市)ではアンモニアサプライチェーンの構築などを推進している。”
合成燃料:合成燃料の実用化のカギを握るのは原料となる水素価格のコストダウンだ。製造に関しては触媒を使って合成ガスから合成燃料に転換する「FT合成」など技術はある。経済産業省の合成燃料研究会によると合成燃料を1リットルつくるのに300~700円程度かかる。国内で水素活用や合成燃料を製造すると約700円で、そのうち水素製造分が634円。将来、水素価格が1リットルあたり127円まで下がるなら、合成燃料を1リットルあたり約200円でつくれるようになるという。