CCS / CCU:CO2を回収して貯留したり、利用する技術のご紹介

「ファッション衣料とサステイナビリティ」というタイトルで情報発信をしているわけですが、「サステイナビリティ」とは直訳すれば「持続可能性」という意味です。人間の日々の活動や、その結果である地球温暖化による気候変動のため、世界各地で環境破壊や気候危機が進んでいます。このままでは私たちの生存環境が劣悪になり、私たちの時代だけの問題ではなく私たちに続く子孫の時代には、地球は非常に住みにくい環境になってしまいます。これを避けるために、今できることから行動を開始して持続可能社会を構築しなければならないという意味を込めて「サステイナビリティ」と言っています。

より具体的には、温室効果ガスの排出を抑制して地球温暖化を緩和することです。主たる温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)です。私たちの生活必需品である衣料品の分野から、CO2の排出を抑制するためにどのような手立てがあるのか、どうすればその手立ては実行できるのかを考えることがこのブログのテーマです。ここでは主として廃棄物の焼却等で今後排出されるCO2を抑制することを考えています。その一方で排出してもCO2を大気中に放出しない、ないしは大気中からCO2を回収する技術開発も進んでいます。それがCCS/CCUです。衣料品に直結した話題ではありませんが、簡単にご紹介したいと思います。

CCS(Carbon Capture and Storage:CO2の回収と貯留)とは、化石燃料を効率的に用いてCO2の発生を抑制するとともに、発生するCO2を大気中に放出しないで貯留するという考え方です。発電所や工場など大規模なCO2排出源でCO2を回収し、大気に触れない地中などに貯留する技術開発が進んでいます。貯留場所は帯水層や枯渇した石油、天然ガス層、廃炭田層などの地中のほか、海洋への希釈溶解、深海底のくぼ地などが検討されています。世界中で年間10万トン以上のCO2を排出する固定CO2排出源を対象にした集計では、石炭火力発電所だけで全産業の排出量の約6割を占めています。石炭火力発電には、排出源1か所あたりの平均CO2排出量が、他の火力発電に比べて多いという特徴があります。また燃料である石炭の埋蔵量が豊富で、石油・天然ガスと比べて安価であるため、今後も発展途上国を中心に増加すると予想されています。このため石炭火力発電所でのCO2回収装置導入に大きな期待が寄せられています。詳しくは下記の三菱重工業(株)のHPをご参照ください。

三菱重工業(株)HP(https://www.mhi.com/jp/special/earth/learn/ccs.html)参照

CCU(Carbon Capture and Utilization:CO2の回収と利用)について、身近な例として佐賀市の取り組みがあります。佐賀市ではCO2を地下に貯留するのではなく分離回収して利用する取り組みを行っています。清掃工場(可燃ごみ焼却施設)の排ガスからCO2を分離回収し、藻類培養や農業に利用しています。

佐賀市のCCU取り組み

佐賀市HP(https://www.city.saga.lg.jp/main/50292.html)参照

もうひとつは、CO2(いったん大気中に排出されたCO2)を大気中から回収して利用する取り組みです。スイスのベンチャー企業である「クライムワークス」が世界で初めて開発・製造に成功した商業用CO2除去プラントがチューリッヒ近郊で稼働しています。大気中からCO2を回収し、農家の温室等に供給して利用する取り組みです。エアコンの室外機のようなファンを積み重ねた装置で、18機のファンが吸い込んだ空気を約100度に加熱し、特殊なフィルターでCO2を吸着します。1年で回収できるCO2は約900トンで、1機が数千本の樹木に相当します。回収したCO2は約400メートル先にある畑の温室に送られ、キュウリなどの野菜の成長を早めるために利用されています。クライムワークスは、アイスランドでは回収したCO2を地下700メートルで鉱物化して、固定化する実験プラントも稼働させています。数年後には大気中から年間数千トンのCO2を回収することを目指しています。現時点では1トンのCO2回収に600ドルかかる高コストが課題になっています。

クライムワークスの施設

先ず考えなければならないのはCO2の排出を抑制することです。しかし人間が活動している以上、電力が必要ですし、色々な産業からのCO2排出もあります。移動手段からもCO2は排出されます。そのようなCO2を排出しても、大気中に放出しない、あるいは大気中からCO2を回収して利用するという技術開発が進めば、温暖化対策として効果が期待できると思います。ただCO2を回収する技術の難易度は高く、またコストが課題になっているようです。また回収したCO2を貯留する場合、どこに貯留するのか、安全性は問題ないのかといったことをしっかり検証して進めてゆくことが大切だと思います。

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