号外:新紙幣、2024年7月に発行

私が若い頃には、財布の中の貴重な1万円札を「聖徳太子さん」などと呼んだものでした。その1万円札の肖像画は1984年に聖徳太子から福沢諭吉になり、2024年には福沢諭吉から渋沢栄一に変わります。来年の7月以降には、新しい紙幣が私たちの身の回りで流通することになります。このところキャッシュレス決済が広がり、現金で買い物する機会は減っているように思います。私も財布の中に多額の紙幣を入れておく方ではありません。それでも、財布の中にある程度の現金が入っていないと、何となく落ち着かないのは私が古い世代だからでしょうか。

2023年6月28日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

渋沢栄一をえがいた新一万円札

“財務相と日銀は6月28日、新紙幣を2024年7月前半をメドに発行すると発表した。デザイン刷新は2004年以来20年ぶり。1万円札は「日本の資本主義の父」と称される渋沢栄一をえがいた。偽造防止に加え、経済効果も期待される。鈴木俊一財務相が日銀の氷見野良三副総裁と国立印刷局の東京工場を視察後、記者会見して明らかにした。これまでは発行を2024年度上期としていた。鈴木氏は発行開始日について「開始の半年ほど前には告示する」と述べた。”

“渋沢栄一は第一国立銀行(現みずほ銀行)はじめ数多くの企業を設立した。1万円札の肖像画の変更は聖徳太子から福沢諭吉になった1984年以来となる。5千円札は樋口一葉から津田梅子になる。津田塾大学の創始者で女性の英語教育に注力した。1千円札は野口英世から北里柴三郎に変わる。日本の近代医学の父として知られ、国内外の感染症予防や治療に貢献した。ペスト菌を発見した功績もある。”

新紙幣の表面

裏の図柄は1万円札が東京駅舎、5千円札が藤(ふじ)の花、1千円札が葛飾北斎の名画「富嶽三十六景」のひとつ「神奈川沖浪裏」となる。紙幣の刷新を発表したのは2019年4月で、当時の麻生太郎財務相が記者会見でデザインを明らかにした。麻生氏は「明治以降の文化人や経済人から選ぶとの考えに沿った」と説明した。偽造防止の観点で精巧な写真が現存していることも考慮した。”

“これまでも20年程度のサイクルでデザインを刷新してきた。最大の目的は偽造防止だが、それだけではない。2019年4月は新元号を「令和」にすると公表した時期と重なる。麻生氏は当時「たまたま」と述べたが、国民の気分一新という心理的な効果を見込んでいた可能性がある。”

新紙幣の裏面

新紙幣には肖像画を立体的に見せるホログラム技術を導入する。紙幣では世界初だ。視覚障碍者に配慮し、触ることで識別しやすくした。金額の表記は漢字より洋数字を大きくした。紙幣の大きさは変わらない。新紙幣の発行後も2千円札を含めて現行の紙幣を利用できる。いまの紙幣の製造はすでに終了し、2022年6月から新しい3種類の銀行券の量産を始めている。新紙幣の流通が始まれば、心理面で消費を促す効果もありそうだ。ATMや自動販売機などを新紙幣の対応型に改修する必要もある。また、改修投資に伴う追加負担を抑えるため、小売業者がキャッシュレス決済に一段と力を入れる可能性もありそうだ。

日本は紙幣の流通量が多い。国際決済銀行(BSI)によると、2021年の流通額は名目の国内総生産(GDP)比で20%を超えていた。米国や英国は10%を下回っており、現金大国といえる。海外でも紙幣刷新の動きはある。欧州中央銀行(ECB)は2024年までにユーロの新紙幣を考案する計画だ。英国のイングランド銀行(中央銀行)は2022年12月にチャールズ国王をえがいたポンドの新デザインを公表。2024年半ばまでに流通する見通しだ。”

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