官民共創を成功に導く「グリーンオーシャン」という考え方①

繊維・ファッション産業の脱炭素を進め、環境負荷の少ない産業へ再構築することはとても困難な仕事です。サプライチェーンは世界中に広がっており、極めて多階層な企業群で構成されています。粗原料から中間財(生地や服飾資材)、そして最終製品(衣料品)の製造、さらにその流通から使用後製品の回収・リサイクルや廃棄まで、これらを一貫した思想で再構築し環境負荷低減につなげることは、考えただけでも気が遠くなるような道のりです。長いサプライチェーンのある部分では、画期的な技術や新素材、新しいサービス(レンタルやサブスクリプションなど)の創出も見られますが、なかなかそれらが有機的につながって拡大・普及していくという段階には至っていません。多階層なサプライチェーンのひとつひとつを、全体のバランスを見ながら調整して再構築していくためには、膨大な手間と時間がかかります。この困難な変革を勢いをつけて推進するためには、規模は小さくても透明性・納得性のある一貫したビジネス成功例を実現し、その成功例を世界中にアピールしていくことで普及を促すというような仕掛けも必要なのではないかと考えていました。そんな時に下記に紹介する記事を見つけました。困難な仕事を前にしてただ頭を抱えていてもしょうがないので、ひとつのアプローチとして検討してみる価値は十分あるように思います。

2023年7月18日付け日経ビジネス電子版に掲載された記事(SOCIALX共同創業者 伊藤大貴氏)より、

“これまで紹介してきた官民共創を成功に導く最後のポイントは、「グリーンオーシャン」という第3の海についてである。「レッドオーシャン」「ブルーオーシャン」は聞いたことがあっても、グリーンオーシャンという言葉は聞いたことがないという人が多いのではないか。それはその通りで、この言葉は造語だ。社会性や公益性があり、マネタイズまでに少しだけ時間はかかるかもしれないが、きちんと事業としても成り立つビジネス領域を筆者らはグリーンオーシャンと呼んでいる。

“レッドオーシャンは競争の激しい市場や業界のことで、ライバルが多く、事業を成立させるのが難しい領域。ブルーオーシャンはまだ誰も目を付けておらず、競争相手が少ない未開拓の市場や業界を意味する。しかし、果たしてブルーオーシャンは存在するのだろうか。実は、ブルーオーシャンはもうほとんど残っておらず、レッドオーシャンしか残っていないのではないか。あるいは、わずかにブルーオーシャンは残っているかもしれないが、その海は誰かに見つかれば、あっという間に海千山千のビジネスエリートがやってきてレッドオーシャンに変わってしまうのではないだろうか。”

“以前、著作家の山口周氏が著書「ビジネスの未来」(プレジデント社)で示した「経済合理性限界曲線」という概念を紹介した。社会にある問題を「普遍性」と「難易度」の2軸で分類し、問題解決にかかる費用と問題解決で得られる利益が均衡する限界ラインを経済合理性限界曲線と位置付けている。テクノロジーの進化によって、経済合理性限界曲線は外側に広がる。外側に広がった領域は、もともと経済合理性がなく行政が担っていた領域であるため、単にテクノロジーで代替できるという理由だけでは社会実装しにくい。その領域のビジネスを展開するには、実行者の社会課題への理解とビジネスに対する社会からの共感が必要になる。この公益性と事業性を両立して初めてビジネスとして成り立つ領域がグリーンオーシャンである。

従来の経済活動は主に顧客と企業にとってのメリットを考えてきたが、グリーンオーシャンの領域は顧客となる市民を含む社会や地域が得られるメリットと企業にとってのメリット、行政が得られるメリットの3つをそろえる必要がある。このため、必然的に収益化するまでに時間がかかる。これを待てないと考える企業なのか、理解を示す企業なのか。自治体は官民共創のパートナーとなる企業を選ぶ際に、そうした視点で接することも重要になってくる。”

Follow me!