号外:永谷園「タイパ歴」70年、お茶漬けからパスタまで

「お茶づけ海苔」でおなじみの永谷園の話題です。手軽に美味しく、まさに食卓の定番商品ですね。私は「松茸の味お吸い物」も気に入っています。1964年(昭和39年)の発売ということで、私が小学校に入学する前後に(いつだったか定かに覚えてはいませんが)初めて食べた時に、「なんて美味しいんだ」と驚いた記憶があります。ところで、タイパ=タイムパフォーマンス(かかった時間に対する効果、満足度)なのですが、コスパ=コストパフォーマンス(かかった費用に対する効果、満足度)の類似語として最近よく目にします。個人的にはこのようなカタカナ略語はあまり好きではありません。短い表現の方が使いやすいのかもしれませんが、短くすればいいというものでもないでしょう。コンビニ(コンビニエンス・ストア)という言い方はすっかり定着しましたが、できるだけきちんとした言葉を使いましょうというのは、年寄りのボヤキですかね。

2023年7月6日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

永谷園の「パキット」

“タイムパフォーマンスとコストパフォーマンスに優れた即席食品といえば、「カップヌードル」や「チキンラーメン」の日清食品が頭に浮かぶ。しかし、チキンラーメンよりも早く即席商品を世に提案した会社がある。お茶漬け市場のシェアの約80%を握る永谷園だ。もともと永谷園創業者の「祖先」にあたる永谷宗七郎は約300年前、京都で煎茶を製造していた。10代目にあたる永谷嘉男が「お茶づけ海苔」を発売したのが1952年で、永谷園を設立したのがちょうど70年前の1953年になる。

“永谷園によると、お茶づけは平安時代に貴族が天然の氷を切り出し、蒸したごはんを冷やしたのが源流とか。その後、武士が湯漬けとして食べるようになり、江戸時代には冷や飯をおいしく食べるため、庶民の生活にも普及したそうだ。創業者の嘉男氏は戦後に小料理屋のしめで、あられ菓子、のり、緑茶で食べるお茶漬けをみて、「一般の生活でも食べられたらいいのに」と考える。そこで編み出したのがロングセラー商品に育った「お茶づけ海苔」。江戸時代の歌舞伎のようなデザインでレトロ感を出し、タイパを足し合わせたお茶漬けのマーケティングは約70年前ながら、まるで今日的だ。”

“その後も即席みそ汁の「あさげ」、ちらしずしのもと「すし太郎」など和風のタイパを進め、今年はついに洋風のパスタでヒット商品を出した。その名も「パキット」。新型コロナウイルス禍の巣ごもり生活で、消費者の困り事として浮上したのが「1人分のパスタを作る面倒さ」だった。1人分でも大人数でも手間は同じで、大量の水を沸かすのももったいない。発案者の永谷園マーケティング本部の三田友理恵さんも個人的に「もっと楽なパスタ製品はないか」と模索していた。そこで思いついたのが鍋を使わず、「ソースの中で麺をゆでること」ソースの入ったレンジパックに乾燥麺を入れ、チンするだけ。簡単そうだが、ベテラン技術者からは「経験的に難しい」という答えが返ってきた。”

“実際に試作に乗り出すと麺が焦げついたり、ソースの液体が大量に残ったり・・・。ベテランが指摘した通り、前途多難な道になった。それでも顧客目線での商品への文句に向き合い、食品成分などの見直しを重ねること約2年。1千回もの試作で、イメージ通りの製品がようやく誕生した。水を入れ、600ワットの電子レンジで6分ほどチン。そのまま7分蒸らし、混ぜるだけで、ゆでたてのアルデンテの食感を味わえる。調理中に別の用事もこなせる。永谷園によると、鍋でパスタを作るより、調理や片付けは計7分ほど短いという。”

永谷園の企業理念は味ひとすじ。このため開発者がパスタの味を向上させるための外食に上限はなく、「もっともっと食べろと勧められる」(三田さん)とか。ヒットは現状に満足する行儀の良さより、批判や非難から始まることが多い。顧客のために「文句の叫び」を重視しよう。”

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