号外:長野で広がるバイオマス発電

再生可能エネルギーを活用して電力を供給し、その電力を動力源や熱源とすることで脱炭素を実現する。事業規模が大きくなれば、それだけ脱炭素の効果も大きくなります。その一方で、製品の製造工程で発生する有機廃棄物やメタンガスを利用して、自給自足的なエネルギー調達や外部への電力供給、あるいは有機廃棄物のリサイクルに取り組む企業もあります。小規模でも効率的な取り組みを継続し、それを数多く積み重ねていくことも脱炭素を実現する有力な手段だと思います。

2023年9月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

みすずコーポレーションの本社工場

長野県の食品メーカーが、製造工程で出る廃棄物をバイオマス発電に使う取り組みを進めている。キノコ大手のホクトが使用済みの培地を燃料として供給する発電所が2025年、三重県で稼働。油揚げや高野豆腐を製造するみすずコーポレーション(長野市)は、排水処理で発生するガスを活用する。発電に加え、肥料などにリサイクルする試みも続けている。”

「パワーエイド三重シン・バイオマス松坂発電所」が2025年1月、三重県松坂市で稼働する。同県内にあるホクトの三重きのこセンター(三重県多気町)が、年間1万トン以上の使用済み培地を燃料として提供。年間発電量は1647万キロワット時を計画する。発電所で生み出した電力の大半はホクトが買い取り、三重きのこセンターで使う。すでに導入している太陽光発電と合わせると、拠点での使用電力の全量をまかなえるという。全国のほかの生産拠点でも同様の取り組みを実現できるか検討中だ。”

飯島グリーン工場

ひかり味噌(長野県下諏訪町)も、バイオマス発電に力を入れる。味噌などの製造では大豆を蒸したり煮たりする工程で大量の水を使うため、排水処理が必須となる。飯島グリーン工場(同飯島町)では、水の浄化作業で発生する大豆の皮などを含んだ汚泥を再発酵させメタンガスを作っている。このガスを発電のほか、ボイラーの燃料としても利用している。みすずコーポレーションの生産拠点である本社工場(長野市)では、約5万平方メートルの敷地の20分の1ほどを廃水処理の設備が占める。1日6000トンもの排水を工場外に流すための処理に巨大な設備が必要で、副産物として1日2600立方メートルのメタンガスが発生している。本社工場敷地内にはメタンガスを燃料にするバイオガス発電機を計11台設置しており、国の固定価格買い取り制度(FIT)を使って電力を外販している。年間発電量は約150万キロワット時で、一般家庭に換算すると約330世帯分の電力に当たるという。排水処理工程で活用するのはメタンガスだけではない。処理槽にたまった汚泥は脱水、乾燥して肥料の原料として売り出している。リサイクル管理部の宮尾幸彦部長は「大豆製品を作っていることもあり、汚泥には窒素やリンなど肥料に必要な成分が多く含まれている」と話す。”

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おから乾燥機

“豆腐や油揚げの製造工程では副産物として1日70トンほどの「生おから」が発生する。生おからを乾燥機にかけて水分を飛ばして14トンほどの乾燥おからにした上で、食用のおからパウダーや非食用ではきのこ培地の栄養剤として売り出している。この乾燥機の一部は油揚げの製造工程で発生する廃食油を燃料にして動かしている。牧茂取締役は「排水と汚泥は必ず出てくるものなので、発電や肥料化の取り組みは続けていきたい」と話す。一方で、バイオマスガス発電に関してはFIT終了後の運用が「今後の課題」という。生み出した電力を自社使用に切り替えた場合の費用対効果の検討を進めていく。

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