号外:IEA提言、再生可能エネルギー「2030年に3倍必要」

脱化石燃料(脱炭素)を目指すことは世界の潮流ですが、日本の現状は各国に比べて立ち遅れています。山地が多く平地が少ない日本の国土では、陸上風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーの導入に制約があることは事実です。しかしその一方で、期待の洋上風力発電の導入もなかなかはかどっていません。東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故以来、原子力発電所の再稼働や新設も滞っています。結果として、電力の安定供給を維持するために、一定割合で火力発電に頼る状況(2030年目標で42%程度)が続いています。温暖化対策は世界全体の課題ですから、日本もその国力に見合った役割をしっかり果たし、貢献していかねばなりません。

2023年9月27日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

洋上風力発電

国際エネルギー機関(IEA)は9月26日、気候変動対策の報告書を公表した。気温上昇を抑えるために再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍に拡大するように提言した。再生可能エネルギーのコストは大きく低下し、化石燃料からの脱却は世界で進む。普及が遅れる日本も対応を迫られる。

“地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標の実現に必要な再生可能エネルギーの容量をIEAが試算した。この目標は世界が2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすることとおおむね整合する。報告書によると、再生可能エネルギーの設備容量を2023年から30年に3倍にすると110億キロワットになる。これは2021年時点の化石燃料の発電容量の2倍強になる。実現すれば、2030年の再生可能エネルギーの発電(容量ベース)に占めるシェアは7割前後になる見通しだ。

再生可能エネルギーの普及が大幅に進めば、化石燃料の需要は2030年までに25%減るという。必要な投資額は2030年代初頭には年4.5兆ドルと2023年の2.5倍になる。IEAによると、2023年から30年の間に約70億トンのCO2排出を回避できる。中国の電力部門から排出されているCO2総量に匹敵する削減幅になるという。技術が成熟し、普及が進んだことで、太陽光と風力の導入期間は短くなり、コストも大幅に下がっている。IEAは今後の課題は新興国や途上国での導入拡大だとして、先進国による支援拡大を求めた。東南アジアや中東、アフリカなどでは拡大の余地が大きい。一方、報告書は1.5度目標の達成には化石燃料への新規投資は必要ないと説明した。

日本は再生可能エネルギーの導入量で欧州や中国に後れをとり、普及が大きく進んでいるとは言えない。推進するための政策の遅れに加え、規制緩和などが進んでいないのが主な要因だ。世界で主流となっている風力発電は2022年に中国は約3700万キロワット、米国は約860万キロワットそれぞれ増やした。日本はわずか23万キロワット。インドやトルコ、台湾も先を行く。日本は工業団地や耕作放棄地などの再生可能エネルギーの可能性が大きい土地の活用が十分ではない。加えて世界で急拡大する洋上風力発電が大規模に立ち上がるのが2030年前後と遅い。現状のエネルギー基本計画で掲げる2030年度に再生可能エネルギーを最大38%とする目標を達成しても2021年度実績比で1.7倍にとどまる。

“世界の主要国は再生可能エネルギーの普及に力を入れる一方、太陽光パネルの生産など供給網(サプライチェーン)の確立に力を注ぐ。大きなシェアを持つ中国などは自国の製品を世界に売り込んでいる。日本も自国の導入を加速するなどして風力発電を整備し、産業として早期に育成しなければ、アジアなど世界の脱炭素に貢献できず、影響力の低下につながりかねない。

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