部活動改革を郵便局がサポート

その昔、私は田舎の中学校のバスケットボール部に所属していました。顧問の先生(男性)は競技経験のない国語の先生でしたので、技術的な指導があるわけではなく、新入部員は先輩の練習を見て見様見真似でプレーを覚えていきました。なんとものんびりしたもので、どんどん上達するという環境ではありませんでしたが、成長期に運動するという意味では、それで良かったのだと思っています。しかし先生の方は大変です。競技経験もないのにバスケットボール部の顧問になり、技術指導はできないにしても、都合の付く限り練習に付き合ってくれていました。課外活動ですが、やはり安全面の配慮が必要だったのだと思います。さらに、対外試合(練習試合や市内の中学校対抗戦等)は結構週末に開催されていました。顧問の先生は週末をつぶして生徒の引率です。考えてみれば、これは相当の負担ですよね。近年、学校の先生のオーバーワークが問題になり、課外活動の指導や安全管理での負担が指摘されています。そのような現状を改善するためにも、下記に紹介するような取り組みが実を結んでくれればと思います。記事の中でも指摘されていますが、このような取り組みを持続的に機能させるためには、それぞれの地域でビジネスとして成り立つように工夫していく姿勢が必要です。

2023年10月10日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

日本スポーツ協会と日本郵政のパートナー契約

日本スポーツ協会(JSPO)と日本郵政がオフィシャルパートナー契約を結んだ。部活動や地域のスポーツクラブの現場で活躍する指導者を協力して育成するという。部活動の指導者向けの研修プログラムの開発、運営を共同で行うが、日本郵政は社員がその研修を受ける際の受講料を負担する。さらに社員による部活動の指導を、業務として認める方向で調整している。つまり、全国の郵便局から希望者をJSPOの公認スポーツ指導者に育て、地域で子どもたちの指導に活躍してもらうわけだ。”

政府は全国約9000の公立中学の休日の部活動の担い手を地域に移す施策を進めている。課題とされるのが教師に代わる指導者の確保。当面は休日の部活動が対象だが、将来は公立高校も含めて放課後の部活動を地域の組織や人材で運営する青写真がある。郵便局は全国で2万4000局。コンビニはもっと多いが、地方に行けば、コンビニは見つからなくても郵便局は近くにあるのが当たり前だったりする。郵便局のきめ細かなネットワークとマンパワーをこの施策で活用できれば、かなりの効果が期待できるだろう。

“現在JSPOの公認資格を持つスポーツ指導者は約24万人。指導者の数が増えても、地域の実情に応じて需要と供給をマッチさせるのは簡単ではない。郵便局の協力があれば、地域ごとの異なるニーズをきめ細かく把握することも可能だろう。とはいえ、この試みを長期的に機能させるには、絶対に必要な条件がある。地域での社員のスポーツ指導が日本郵政にとってビジネスとなることだ。日本郵政の桝田寛也社長は「スポーツを通じた地域活性化の推進に寄与したい」と語る。同社の業務と親和性が高い社会貢献活動でもあるが、それが国や自治体からの補助金がなくても、利益を生むようにしなければ、持続可能とは思えない。

中学校の卓球部を指導する指導員

スポーツが教育として定着した日本では、学校に行けば無償でスポーツの指導が受けられるのが当たり前だった。素晴らしい仕組みだが、それはスポーツでお金を稼ぐことに否定的な風潮とつながっている。それを変えなければならない。多くの人が「する・みる・ささえる」でスポーツに気軽に参画する状況を作り、学校施設をはじめとする既存のリソースを効果的に使って、地域でお金を回すシステムを作ることが求められている。実際に指導を受ける生徒の家庭が負担するほかに、学校の施設を活用して地域住民から集めた資金を子供のスポーツ教育に還元するといったやり方もあるはずだ。人口減少がさらに進めば、これだけの数の郵便局の維持は現実に難しくなる。郵便局という地域のインフラとして欠かせないリソースの新たな可能性を探る意味でも、注目したい取り組みだと思う。

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