EUが大筋合意、売れ残りの服・靴の廃棄を禁止

リサイクルが難しい衣料品では、使用後衣料品の廃棄が課題になっています。リユースされる製品(古着など)もありますが、「売れる古着」はかなり限定されています。それ以上に問題なのが、大量生産の結果として発生する「売れ残り製品」の廃棄です。ブランドの価値を守るというような説明がなされますが、これはその製品を製造するために投入された資源や労働力を完全に無駄にすることであり、「作り過ぎ」の後始末のために不必要な環境負荷を高める行為です。フランスでは2022年1月に「衣類廃棄禁止法」が施行され、企業が売れ残った新品の衣類を焼却や埋め立てによって廃棄すること禁止し、リサイクルや寄付によっての処理が義務付けられました。違反した場合には、最大15,000ユーロ(約190万円)の罰金が科せられます。罰金の金額よりも、ブランドイメージが毀損される影響の方が大きいでしょう。このような動きがEU全体に広がろうとしています。欧州市場で事業展開する域外のアパレル企業も対応を迫られることになります。リユースやリサイクルも大切ですが、先ずは「無駄な生産をしない」ということが、繊維ファッション産業における環境配慮の基本だと思います。

2023年12月6日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

欧州議会

欧州連合(EU)の主要機関は12月5日、域内で事業展開するアパレル事業者に売れ残った服や靴などの衣料品を廃棄するのを禁じる法案で大筋合意した。今後、正式な承認手続きに入り、2年後から施行する。流行品を低価格で大量消費する「ファストファッション」による衣料品の廃棄拡大に歯止めをかける。EUの立法機関である欧州議会と、加盟国の代表でつくる閣僚理事会が政治合意に達したのは、商品の環境配慮設計を義務付ける「エコデザイン規制」の改正案だ。売れ残ったり返品となったりした衣料品をそのまま廃棄するのを禁じ、再利用や別商品へのリサイクル、修繕、寄付などを促す。

“電気自動車(EV)向けなどの蓄電池で採用を進めている「デジタル製品パスポート」にも対応する。衣料品ごとに原料の産地・加工場所、ライフサイクル全体での温暖化ガス排出量、再生原料の利用率などの情報をデータとして管理・開示させる。

SHEINへの抗議活動(フランス)

消費者が購入した服が破れたり靴底がすり減ったりした際に、どれだけ簡単に修繕できるかを指数化し、商品タグに記載することも検討する。「ZARA(ザラ)」を手掛けるスペインのインディテックス、ユニクロを展開するファーストリテイリングなどアパレル大手には2年後から同規制が適用されるが、中小事業者は6年間の移行期間が設けられる予定だ。違反した場合の罰則規定については加盟各国が決めることになる。

2000年代からファストファッションが浸透し、流行の移り変わりに合わせて大量の廃棄が生じている。EUの試算では、毎年廃棄される服は1人平均で12キログラムで、全体では1260万トンに上る。このうち再利用やリサイクルに回すのは22%にとどまる。コストがかかるからで、大半は裁断・焼却されゴミとして処分されている。マッキンゼーの調査では、衣料品関連の温暖化ガス排出は約21億トン(2018年)で世界全体の4%を占める。気候変動の要因として4番目に大きな項目だとされる。

欧州議会によると、2000年から2020年までに世界の衣料品生産量は2倍近くに増えた。このままのペースで進むと、2030年までには2020年比3割増の1億4500万トンに達し、廃棄量はさらに拡大する恐れがある。EUは衣料品以外の製品についてもエコデザイン規制の対象とし、資源の循環による廃棄物の抑制を進める。スペインのボハー産業・通商・観光相は「製品の持続可能な要素を設計の初期段階から確実に考慮されるようにしたい」とコメントした。”

Follow me!