号外:グローバルサウスの怒りが世界を揺らす

最近「グローバルサウス」という言葉をよく耳にします。東南アジア、アフリカ、南アメリカなどの(欧米から見れば南方の)新興・途上国群を示しているようです。色々な歴史や文化を持った国々を一括りにしているようで、個人的には多少の違和感を覚えます。以下は、そのグローバルサウスの国々の歴史や実力・傾向と、先進国(例えばG7)の状況を比較して概説した記事です。必ずしも両者が対立するものではないでしょうが、将来に向けて益々お互いを尊重する姿勢が大切なことは理解できます。まちがいなく世界のパワーバランスは変化しています。

2023年11月23日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“ロシアのウクライナ侵略が続き、アジアでも台湾海峡や朝鮮半島で緊張が高まる。世界は第3次大戦の危機に直面しつつある。そこで注目すべきなのが、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国群の動きだ。これらの国々は世界の国内総生産(GDP)の約4割を占めるとともに、国際政治の現状にいら立ち、憤っている。「怒れるグローバルサウス」の内実に光を当てて、今後の世界を予測する。”

世界は第2次大戦の惨禍を経て、約80年近くにわたり、戦後の時代を生きてきた。戦勝国であった米英を中心にして築いた国連などの戦後システムによって、大戦は防がれ、経済は繫栄した。ところが、ロシアによる2022年2月24日のウクライナ侵略によって、戦後は終わりを告げ、世界は戦前に突入している。極めて大切なことは、戦前の時代をできるだけ長く続け、戦時(第3次世界大戦)に突入するという、最悪のシナリオを防ぐことだ。”

“どうすれば良いのか。ウクライナ戦争米中対立の2つの行方は引き続き重要な変数だが、今後、併せて注目すべきなのが、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国群の動きだ。グローバルサウスは年々、経済的な重みを増している。これらの国々が、世界のGDPに占める割合は米ソ冷戦の終結時、約2割に過ぎなかった。ところが今や約4割に膨れ上がっている。対照的に、日米欧からなる主要7ヶ国(G7)のGDPはこの間、約7割から約4割に激減してしまった。

ロシアのウクライナ侵略をめぐる世界の対応

国際政治が混沌とするなか、グローバルサウスが西側諸国と連携するのか、中国・ロシア寄りの立場をとるのかによって、世界の力学は大きく変わる。後者の展開になれば、強気に振る舞う中ロの勢いが増し、世界が一段と不安定になってしまう。第3次大戦のリスクも高まりかねない。では、グローバルサウスはどちらの道を選ぶのか。結論からいえば、西側諸国と距離を置く国々が増えていく危険がある。そんな予兆を示しているのが、ウクライナ侵略に対する各国の立場の変化である。”

2075年のGDPランキング見通し

“英誌エコノミストの調査部門EIUの最新調査(2023年3月)によると、ウクライナ侵略を非難するか、西側寄りの立場をとる国々は、世界人口の約36%にすぎない。ロシア支持・ロシア寄りは約33%、中立は約31%を占める。世界は西側陣営、中ロ陣営、中立派の3極に割れている。問題は、情勢が西側陣営に不利な方向に傾いていることだ。EIUの前回調査(2022年3月)ではロシアを非難するか、西側寄りの立場をとる国々が131ヶ国に上ったが、最新調査では122ヶ国に減ってしまった。逆に、ロシア寄り・支持の国々は29から35に増えた。新たに増えた6ヶ国とは、南アフリカやイラン、ウガンダ、マリ、ブルキナファソ、ボリビアといった、グローバルサウスの国々だ。

“ふつうに考えると、この傾向は理解しがたい。プーチン政権によるウクライナでの残虐な行為は、誰の目にも明らかだ。グローバルサウスはなぜ、ロシアから離れ、西側寄りの立場に転じないのだろうか。背景には西側諸国への強い不満と怒りがある。理由は少なくとも4つある。第1に、今の国際システムは米欧主導で運営されており、自分たちの意見が十分に反映されないとのいら立ちだ。その典型が、国連安全保障理事会である。拒否権を持つ5つの常任理事国のうち、3つのポストを米欧が独占している。第2に、西側による対ロシア制裁のあおりで、食料やエネルギー価格が上がり、自国の経済が深刻な影響を受けているという怒りがある。”

“第3に、西側諸国の「二重基準」に対する反発も根深い。たとえば、シリアやイエメンでは紛争で多くの死傷者や難民が出ているが、西側は解決に全力を注いでいるとはいえない。それなのに、ウクライナが侵略された途端に大騒ぎし、世界各国に支援を求めるのは「明白なダブルスタンダード」(中東シンクタンク幹部)というわけだ。ロシアの侵略は許されるべきではないが、米国も2003年に国連決議なしでイラクを攻撃した、という批判もある。そして第4に、過去の歴史をめぐり、グローバルサウスが抱く怒りも侮れない。アジアやアフリカ、中東、中南米には、かつて西洋に植民地化された国々が少なくない。その結果、民族の分布に関係なく、人工的に国境が引かれたり、国内の農業や産業がいびつな形で発展したりするケースがみられた。各国は多かれ少なかれ、いまでもこうした「負の遺産」に苦しんでいる。こうした西側への悪感情は簡単に和らぐとは考えづらい。特に、植民地支配の過去には今後、さらに怒りのマグマが噴出しかねない。”

“もっとも、グローバルサウスは、3つの異なる勢力に分けて考える必要がある。第1の勢力は反米欧色が濃い国々で、典型はイランだ。第2は、どちらかといえば、西側寄りの立場をとる国々だ。インドや、米軍駐留を受け入れているフィリピンが代表例である。そして第3は西側陣営、中ロ陣営のどちらにも偏らない中立派であり、多数がこの勢力に属する。サウジアラビアやインドネシアも、この勢力に含まれるだろう。”

西側諸国からすれば、最悪のシナリオは、第1の反米欧勢力が主導権を握ることだ。中国やロシアはそうした筋書きを狙い、半植民地主義キャンペーンを強めようとしている。西側としては、中国とグローバルサウスの盟主の座を競うインドなどの立場をもり立て、食料やエネルギー、気候変動問題での協力を新興・途上国と深めるのが上策だ。

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