牧場まで遡るファーストリテイリング①

ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングのサプライチェーン改革を紹介した記事です。また欧州連合(EU)の環境規制や、ファッション産業の循環型事業への移行を推進する対応も進めています。SPA(製造小売業)としての特長を生かし、従来型アパレル企業とは異なるアプローチで事業を発展させてきましたが、今後もますますその強みを発揮するための準備を着実に進めているように思います。ファーストリテイリングは、40年前の広島市内のユニクロ1号店からスタートしています。地道な改革を続けながら、世界年間売上高10兆円を目指す規模までに成長してきました。アパレル企業に限りませんが、日本から次のファーストリテイリングのような成長力を持つ企業、ビジネスモデルが育っていくことを期待しています。

生誕40年のユニクロはどこへ>の項を参照

2024年3月4日付け日本経済新聞電子版(日経MJ)に掲載された記事より、

“ファーストリテイリングが製造小売業(SPA)モデルに磨きをかけている。サプライチェーンの最上流にあたる原材料の調達に踏み込み、効率的な生産と環境対応を両輪で進める。欧州を中心にアパレル産業への規制が強まり、供給網の透明性が問われるなか「最強のサプライチェーン」作りに挑む。”

“ユニクロの冬の主力商品「カシミヤ」。カシミヤヤギの産毛からつくるカシミヤ素材を100%使い、セーターの定価は1万~1万3千円。2月時点では値引きなどで5000~7000円程度で販売している。大手百貨店に並ぶ独自商品の半額程度の水準だ。こうしたユニクロのカシミヤ商品の安定供給を支えているのが、地道な現地調査だ。ファストリでは、自社のカシミヤ100%商品につながる牧場を、これまでにほぼすべて把握した。さらに担当者は、カシミヤヤギが飼育されている牧場を自ら訪問している。年に2~3牧場のペースで、動物愛護などの観点から全ての飼育環境を確認するのが目的だ。牧場の訪問は2019年から始めた。2023年からは琉球大学と連携して、衛星データの活用を開始。上空から撮影した衛星写真などをもとに、牧場周辺の植生や生態系に影響がないかなども分析している。技術も活用しつつ「直接足を運び、自分たちの目で確認する原理原則を大切にしている」(担当者)。”

“ファストリが、製造から販売までを自社で管理するSPAモデルを進化させている。2023年のユニクロの春夏商品から、原材料から縫製までの供給網を商品ごとに把握した。社内システムで原材料の生産国から縫製工場までの製造工程の情報を一覧で参照できるようにしている。取引先にデータを提供してもらいながら「トレーサビリティの地図を地道に作り込んでいる」(サプライチェーンの担当者)。まず綿から産地や品質などを指定して調達できるようにしており、今後は羊毛などの素材まで範囲を広げる計画だ。”

アパレル産業の供給網の管理は、工業製品などと比べてハードルが高い。衣料品の製造プロセスは原料の調達から始まり、糸を紡ぐ「紡績工場」、生地を織ったり染めたりする「素材工場」、生地を縫い合わせる「縫製工場」の4つの段階に大別される。各工程で国や地域をまたぐことが多く、天然繊維の原料は世界中に点在する農場や牧場が生産している。さらに各工程で専門商社を介して商品の企画や発注をすることも多い。従来型のアパレル企業では商材ごとに複数の商社や卸が介在。人権リスクに備えて縫製工場までは把握していても、素材や紡績工場、原料の産地まではできていないのが実情だ。一方、ファストリは供給網の管理を通じて、店舗での売れ行き情報と生産計画を直結することで成長してきた。「(供給網の最上流の)天然素材の原料調達まで追跡するのは大手でも初めて」(ファストリ)。”

ファストリの改革のカギとなるのが、取引工場の集約だ。紡績工場の取引数は今後数年で現状の3分の1の規模にする。先行して集約した素材工場と縫製工場の合計(2023年9月の開示ベース)はすでに676。「ZARA」を運営するスペインのインディテックスは2022年時点で1729社と直接取引し、間接的なサプライヤーとしては8271工場が携わる。ファストリの狙いは工場の数を絞ることで、自社の目が行き届きやすくすることにある。集約した縫製工場と素材工場にファストリは担当者を貼り付けている。例えば環境担当の社員は上海の事務所に籍を置きながら、1ヶ月のうちに10日間程度は東南アジアやインドの工場に出張する。生産管理の担当者は、縫製工場にほぼ常駐、工場側と密に連携している。”

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