号外:海水で分解しやすいプラスチック
プラスチックの海洋汚染や、マイクロプラスチックの生態系への悪影響が問題となっていますが、海水中でも分解しやすいプラスチックが開発されたという話題です。生産コストが高いといった課題がありますが、早期に実用化されて、環境負荷の低減に貢献するることが期待されます。植物由来のポリ乳酸が原料なので、「脱石油由来プラスチック」というメリットもありそうです。
2024年4月5日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“産業技術総合研究所とカネカなどは海水中でも分解しやすいプラスチックを開発した。生分解性プラスチックの原料であるポリ乳酸に微生物が合成する材料を混ぜ、より強度を高く、海水で分解しやすくした。生分解性プラスチックの原料として広く使われるポリ乳酸は、プラスチックとして一般的なポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート(PET)と似た性質を持つため、代替材料として期待されている。ただ、伸びにくくもろい特徴があり、海水で分解しにくい。”
“研究チームは、遺伝子改変した微生物を使って合成したLAHBという材料を、ポリ乳酸に混ぜた。LAHBは乳酸と、微生物がエネルギー源として生成する物質からできた物質だ。これまでの実験で、LAHBは海水中で分解しやすい性質を持つとわかっている。開発したプラスチックを海水中につけると、半年で約50%以上が分解した。ポリ乳酸のみでできた従来の生分解性プラスチックに比べて伸ばしたときの強度が15倍以上になった。透明性も高く、使用できる用途も広がるという。”
“研究チームは生産コストの高さなどの課題を克服して、実用化を目指す。産総研の今井祐介研究グループ長は「(海洋汚染が問題になっている)マイクロプラスチック問題が指摘される中で、海水中のような一般的な自然環境に出たときに分解されることを示していきたい」と話す。