号外:日本の脱「廃プラ」に遅れ、企業はバイオ転換急ぐ

衣料品に多く使われている合成繊維はプラスティックのひとつの加工形態です。日本では毎年約900万トンものプラスティックが廃棄されています。そしてその多くは、衣料品を含めて、焼却され(サーマルリサイクルを含む)CO2を排出しています。廃プラの海洋汚染だけでなく、廃プラ全体の削減、すなわちプラスティックの使用そのものを見直す必要があります。

2019年10月4日の日本経済新聞電子版に掲載された記事です。

“プラスティックごみ(廃プラ)が国際的な問題となる中、日本は削減対策で「後進国」との見方が浮上している。「燃やすリサイクル」を重視し、プラ使用量の削減や新素材導入で欧米に出遅れているためだ。日本は自国の排出する海洋プラごみは世界全体の1%未満で、プラ再生率は2017年時点で86%と世界トップ水準だと公言してきた。しかし日本のリサイクル対策は焼却時に発生するエネルギーを使う「サーマルリサイクル」が6割を占める。2018年の経済協力開発機構(OECD)の報告書では、CO2の排出を理由にリサイクルと認められず再生率は約2割に低下した。再生率は欧州連合(EU)平均の約3割に及ばない。”

日本国内廃プラ処理の状況

このグラフが示すように、2017年の総廃プラ排出量903万トンのうち約60%がサーマルリサイクルされたとしています。この部分は、余熱の有効活用はされていても、結局は焼却されてCO2を排出しています。根本的な問題はCO2の排出による地球温暖化なのですから、余熱を利用しているからリサイクル(環境負荷低減)だという論法は説得力に欠けます。実際的なリサイクルはマテリアルリサイクルの23%とケミカルリサイクルの4%を加えた27%程度という評価を受けても致し方ないと思います。日本がサステイナブルであるためには、プラスティックの使用そのものを見直し、廃プラを削減することを考えなければなりません。

“日本の課題はプラ排出量の多さだ。2017年の総排出量は前年比0.4%増の903万トンと4年ぶりに増加した。1人当たりのプラスティック包装容器の排出量は、年間30キログラム超(2014年時点)と中国やEUに比べて多い。プラ削減の有効打は代替材料の活用や原材料へのリサイクルだが、日本は出遅れている。化学大手の独BASFやブラジルのブラスケムなどがバイオプラ(カーボンニュートラル)の量産に動き、現時点で世界の使用量は日本の50倍の年約200万トンにのぼる。”

“米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は2030年までに全ての包装の再利用などを可能にする。英蘭ユニリーバなどは2025年までに包装用プラを再利用やリサイクル、生分解性材料に切り替える。”

日本でも、花王や三菱ケミカルホールディング等は今年1月、対策に取り組む企業連合をつくり、その連合は265社・団体に広がっている。「焼却ではなく回収方法を含め、廃プラリサイクルの技術開発を進める」としている。素材メーカーでは、クラレが米工場で1500万ドル(約16億円)を投じ、食品包装用フィルムにする生分解性プラスティックの生産を2020年初めにも開始する。”

プラスティックは私たちの生活全般で利用されている非常に便利な材料ですが、先ずはその使用方法を見直して使用量を抑えなければなりません(代替天然素材の利用)。さらに廃棄する際のCO2(温室効果ガス)排出や廃プラスティックによる環境汚染を抑制するためには、リサイクル材料、バイオマス由来や生分解性プラスティックの活用(技術革新)が有効です。新素材のコストをどのように吸収してゆくかという課題はありますが、このまま手を打たずに、現状を放置しておくと、取り返しのつかないことになってしまいます。

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