号外:シールドプラス:プラスティック使用量削減のための代替素材

私たちの生活のいたるところでプラスティック製品がたくさん使われています。プラスティックは成形が容易で、軽くて、物性が安定していて、しかも安価です。しかし昨今、プラスティックごみ(廃プラ)が世界で大きな問題になっています。廃プラを削減してサステイナブルな社会を目指すためには、プラスティックの使用自体を見直す必要があります。

2019年10月7日の日本経済新聞電子版に掲載された記事です。

“日本製紙がプラスティックを代替する紙包装材「シールドプラス」の事業拡大を急いでいる。「脱プラ」の機運が高まる欧州で2020年から量産を始めるほか、アジアでも事業拡大を視野に入れる。「シールドプラスは高い評価を受けている。海洋プラスティックごみの問題をきっかけに紙を見直す動きがあり手応えを感じている。」と日本製紙の野沢社長は強調している。”

日本製紙のHPに「シールドプラス」の商品説明が掲載されています。

シールドプラスの構造

紙は環境に優しく、加工しやすい材料であることから、包装材料(シート)として広く使用されていますが、空隙が多いため高いバリア性が要求される用途には適していませんでした。内容物(特に食品)は製造して以降、時間の経過や環境変化によって次第に化学的な劣化が進みます。このため、内容物を包むパッケージには、酸素や水蒸気などの透過を防ぎ、内容物の商品価値低下を抑える機能が求められます。また、内容物の香りを保ち、外からの「におい」の侵入を防ぐこともパッケージの重要な機能です。「シールドプラス」は、木質素材100%から成る基材に製紙用水系塗工技術を活用したバリア塗工層を付与した紙製バリア素材です。循環型資源(サステイナブルな資源)である「木」を基材としており、生分解性シーラントフィルム(加熱圧縮するためのフィルム)と組み合わせることで、包材としての生分解処理が可能になる、環境適合性に優れた素材です。当初は食品メーカーを主な顧客と想定していましたが、化粧品や医薬品からも引き合いがあるとのことです。

“海洋汚染問題をきっかけに「脱プラ」の流れが世界で広がる。欧州連合(EU)は2021年までに使い捨ての一部プラスティック製品の販売を禁じる。グローバル企業ほど「脱プラ」対応が急務となっており、代替として紙製包装材料が伸びる余地は大きい。スイスのネスレは菓子製品の包装の紙化を進め、日本でも「キットカット」の外装に紙を採用した。

家電製品や自動車に使われているプラスティックについては、耐久性や加工性の問題があり、そう簡単に別素材で代替することはできないでしょう。自動車部品をプラスティック化することで軽量化し、燃費性能を向上させてもいます。

しかし包装材料や容器については、私たちが少し不便な思いを我慢すれば、代替材料を使える可能性は大きいと思います。飲料等にはPETボトルが大量に使われています。これをビンやカン、紙パックで代用することは可能です。ちょっと前まではこれらの材料が使われていました。多少重くなったり、取り扱いに注意が必要だったりするかもしれませんが、ビンやカンはリサイクルできます。紙パックは、リサイクルは難しいとしても、カーボンニュートラルで、生分解性もあります(ラミネート材料の選択が必要)。食品包装等(医薬品、化粧品etc)に使われるフィルムやトレイは使い捨てであることが多いので、紙で代替できれば、プラスティック使用量の削減に効果があると思います。

一気にプラスティックごみ(廃プラ)問題を解決できる方法は存在しないでしょう。しかし他の素材(紙等のサステイナブルな天然素材)で代替可能な用途では、は少しずつでも代替を進めてゆく努力が必要です。私たちにできること、ひとつひとつのことを地道に積み上げてゆくしかないと思います。

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